研究実績の概要 |
2018年度において本研究課題は極めて大きく前進した. 我々は以下に述べるように多くの結果を得て, それらのプレプリントを作成した. (1) Richard Cleve, Li Liu, Vern Paulsenとの共同研究: self embezzlementは可換作用素の枠組みであるか,従来のヒルベルト空間のテンソル積の枠組みで起こるかによって大きく異なる振る舞いをすることを示した. この問題に対して,可換作用素モデルでの異なる振る舞いはすでに確認はされていたが, 従来のモデルで任意の精度で近似可能な範囲内であった. 我々の論文では,従来のモデルでは任意の精度で近似できないような可換作用素モデルに対して示した点が重要である. (2) 大坂, Sapraとの共同研究: 新しい系統的な量子情報理論に応用をもつ正値写像だが完全正値写像でない写像の構成方法を見出した. (3) Ivan Bardet, Gunjan Sapraとの共同研究: 有限次元行列代数間の同値線形写像をChoi行列の観点から特徴づけて,ある同値性をもつクラスの特徴づけを行い, そのChoi行列のグラフィカル表現などを与え, それをエンタングルメント検出に応用した. (4) Michael Brannan, Hun Hee Lee, Sang Gyun Younとの共同研究:Michael Brannnanと研究代表者により導入した自由直交量子群から作られた3つのパラメータを持つ量子チャンネルのキャパシティについてより深い研究をした. これまで手の届かなかったdegradability(分解性)などの性質を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
まず, 次に行うべき研究はYounとの共同研究の遂行である.無限次元における非ランダムな量子チャンネルで加法性の破れを起こすもの得ることができており, Haagerupの不等式を用いてそれらの正則化エントロピーの評価を得ることができる. これらを得るのに自由確率論が極めて重要となっている. 別のプロジェクトとして, SU(2)の表現論的性質をテンソル積の正値性の問題の研究に応用する研究プロジェクトがある. これについてMuller-Hermesとオスロで議論を開始した.またBardetやSapraとAl Nuwairanとの量子チャンネルとエンタングルメント検出のための群対称性についての共同研究を継続して進めていく. そして, さらにラマヌジャングラフの量子情報理論への活用を続けて模索していく.
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