研究課題/領域番号 |
17K18736
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
降籏 大介 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (80242014)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 確率微分方程式 / 構造保存数値解法 / 伊藤積分 |
研究実績の概要 |
研究計画の二年度においては初年度の成果等をもとに、以下のような段階を踏んで各分野の専門家と協働も含めたアプローチを行なった. (継続) ステップ 1b: 初年度に続き数学的に単純な問題に対する調査を行った.具体的には、現実問題に対する実学での応用が多く見られる線形単独な確率微分方程式を対象としての研究である.このとき、Stratonovich 積分ではなく、伊藤積分に立脚する形式で確率微分方程式を表現する場合にのみ、特有の数学構造が表出するのであるが、この数学構造を対象として、発展作用素の離散化に相当する離散平方作用素を用いて、構造保存数値解法を構成し、その数学的性質を調査した.また、数値実験による保存性の結果は理論が示した通りのものであり、対象問題が線形であることもあり、このステップにおいては計画通りの研究遂行状況である. (継続) ステップ 2b : 構造保存数値解法によって構成される数値スキームはその結果の数学的性質の良好さと引き換えに、問題の離散化過程において多くの数学的要請がなされる.その一つに基底空間の離散化とその上での(通常の意味での)微分作用素の離散化に課せられる要請(たとえば Gauss-Green の定理の再現など)がある.この要請に対して、通常は有限要素法的なアプローチや直交格子を基底とする方法などが用いられるが、実用を鑑みると基底の自由度を上げた上での有限体積法的なアプローチが望ましい.これに対し、内外の微分方程式に関する応用数学研究者と連携するなどの研究協力により、こうした方向性の研究を進めた.具体的には、本研究結果を国際研究集会 EASIAM2018 (13th SIAM East Asian Section Conferene 2018)をはじめとする内外の研究集会・学会にて講演発表し、現地にて専門家と最新の知見を共有した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の項目で述べているように、研究成果については独自の内容で当初の研究計画に沿った成果を得ており、現時点で全般にほぼ当初計画に沿った進展が見られると考えられる.また、平成30年度に本計画研究者が応用数学の専門家が集まる国際会議 EASIAM2018 (13th SIAM East Asian Section Conferene 2018) および ANZIAM 2019 (Autralian and New Zealand Industrial and Applied Mathematics) にて研究発表を行い、研究交流を推進したこともまた予定通りである.これらにより本研究の研究成果、実績について当初の計画からの大きなずれは無く、本達成度としてみずから評価するものである.
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今後の研究の推進方策 |
H31年度も、ほぼこれまでの計画に沿って研究を推進していく方針である.具体的には、H31年度は以下のような推進方針である. ステップ 3: これまで構成した新しい構造保存数値解法の数学的な解析を、関数解析手法により行う.こうした解析により数値解の絶対安定性やその他優れた性質が証明できることが多々あることから、数学的にはこのステップが本研究の白眉とも言える部分である.こうした解析においては、確率分布論における関数解析論の専門家など(上記研究室の F. Lindgren 氏, 大分大学の吉川教授等)と協働し研究を推進する. ステップ 4: 対象問題を非線形問題に拡張し、新しい構造保存数値解法本手法の拡張に関する研究を行う.一般の非線形性そのものを直接扱うことは数学上の困難が強すぎるため、まずは弱非線形性問題および非線形性が多項式で表現される確率微分方程式を対象とする.特に、多項式表現による非線形性が導入されている問題は現実問題の非線形問題の相当な範囲を網羅するため、このステップの研究過程は応用上重要である.さらに、強い非線形性を持つ問題に対しても、その多くは初等関数によるものであるため、級数展開に基づき、上記の多項式表現に関する研究を拡張することで援用が可能であると考えられる.これにより、ほぼ一般の非線形問題に対しても本研究を適用することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
理論的進捗に集中していたことや協働を予定していた海外研究者Fredrik Lindgren の研究環境の変化により大型計算に必要として購入予定であったワークステーションの購入を延期したため、ほぼワークステーション一台分程度にあたる次年度使用額が生じることになったものである.次年度にほぼこの予算分のワークステーションを購入する計画である.また、次年度に本邦(京都にて10月を予定)にて国際研究集会を開催するための費用も計上している.
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