研究実績の概要 |
2次元有界領域上で定義されたPoisson問題に対する有限要素法に対して、領域の三角形分割の品質が有限要素解の精度にどのような影響を及ぼすかを調べた。通常よく使われるLagrageタイプの有限要素法においては、三角形分割内の三角形の外接半径の最大値が0に収束していくという「外接半径条件 (circumradius condition)」が本質的に重要であることが、申請者の研究でわかっている。この外接半径条件は、従来よく用いられる正則性条件を大幅に緩和したものであるが、本研究の目的はこの条件をさらに緩めることができる有限要素スキームを見出すことであった。 そこでまず、Crouzeix-Raviart有限要素法が悪条件の三角形分割に対して頑健であるのではないかという予想を立て、それを検証することを試みた。その結果、Crouzeix-Raviartとそれとほとんど同値なRaviart-Thomas有限要素法においても、三角形分割の外接半径条件が本質的であるという結果を得た。その結果を、以下の論文にまとめ学術誌に投稿した: Kenta KOBAYASHI, Takuya TSUCHIYA, "Error analysis of Crouzeix--Raviart and Raviart--Thomas finite element methods", arXiv:1712.06242. 数値例によると、Crouzeix-Raviart, Raviart-Thomas有限要素法においては、外接半径条件は「最良の」もので、これ以上条件を緩和することはできないようだ。
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