研究課題/領域番号 |
17K18743
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
枝松 圭一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (10193997)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 量子光学 / 単一光子 / 原子内包フラーレン |
研究実績の概要 |
近年の基礎量子物理学および量子情報通信技術に関する実験的研究の飛躍的進展に伴い,高性能単一光子源の開発が切望されている.本研究代表者らは,プラズマ法によって合成された窒素原子内包C60 (N@C60)から強い発光が観測されることを見出し,その高性能単一光子源としての可能性に注目した.本研究では,N@C60からの相互可干渉単一光子の発生とその高性能単一光子源へ応用を目的とした萌芽的,探索的研究を行う.今年度は, (1) 室温における単一光子放出の確認と単一光子源としての性能評価, (2) 低温における単一光子検出のための低温共焦点顕微分光装置の開発, (3) 単一光子源とナノ光ファイバとの高効率結合系の開発, を行った.(1)については,研究提案段階で観測していたN@C60の発光スペクトルが,試料に混入していた微量不純物(発光性有機分子)によるものであることが判明し,新たにN@C60固有の発光を検出,発見する必要が生じた.N@C60の電子準位の理論計算から,可視域に非常に長寿命(狭線幅)の準禁制発光があることが予測されており,現在までにその検出を試みているところである.(2)については,XYZピエゾステージ(新規導入)を用いた低温共焦点顕微分光装置を構築し,そのシステム性能を評価中である.(3)については,ナノ光ファイバ・金ナノ球複合系の構築とその評価実験を進めた.今後,N@C60固有の発光を同定次第,単一光子の検出と単一光子源としての性能評価を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで観測していたN@C60の発光が微量不純物によるものであることが判明し,新たにN@C60固有の発光を検出,発見する必要が生じた.この点では研究計画に遅れが生じているが,現在その検出を急いでいる.一方,低温共焦点顕微分光装置の開発および単一光子源とナノ光ファイバとの高効率結合系の構築とその評価実験は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,N@C60固有の発光を検出次第,単一光子の検出と単一光子源としての性能評価を行う予定である.予測される発光が検出できれば,たいへん大きなインパクトをもつ.また,N@C60固有の発光の検出が難しい場合は,研究対象を別試料(ダイヤモンド中のSiV中心等)に切り替えることも視野に入れている.低温共焦点顕微分光装置の開発および単一光子源とナノ光ファイバとの高効率結合系の開発は順調に進んでおり,今後もさらに研究を加速する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度所要額は予定通りほぼ(97%)使用し,残額は次年度の物品費,旅費として使用することとした.
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