研究課題
近年の基礎量子物理学および量子情報通信技術に関する実験的研究の飛躍的進展に伴い,高性能単一光子源の開発が切望されている.本研究代表者らは,プラズマ法によって合成された窒素原子内包C60 (N@C60)から強い発光が観測されることを見出し,その高性能単一光子源としての可能性に注目した.本研究では,N@C60からの相互可干渉単一光子の発生とその高性能単一光子源へ応用を目的とした以下の萌芽的,探索的研究を行った.(1) 室温における単一光子放出の確認と単一光子源としての性能評価,(2) 低温における単一光子検出のための低温共焦点顕微分光装置の開発,(3) 単一光子源とナノ光ファイバとの高効率結合系の開発,(1)については,研究提案段階で観測していたN@C60の発光スペクトルが,試料に混入していた微量不純物(発光性有機分子)によるものであることが判明し,新たにN@C60固有の発光を検出,発見する必要が生じた.N@C60の電子準位の理論計算から,可視域に非常に長寿命(狭線幅)の準禁制発光があることを予測し,2光子励起分光法を用いてその検出を試みたが,N@C60固有の発光と同定できる有意な発光は観測されなかった.(2)については,XYZピエゾステージ(新規導入)を用いた低温共焦点顕微分光装置を構築し,そのシステム性能を評価した結果,回折限界(0.65μm)の分解能で単一光子を安定に検出可能な性能をもつことを確認した.(3)については,ナノ光ファイバと金ナノ球・量子ドット複合系の構築とその評価実験を進め,金ナノ球のプラズモン共鳴散乱とナノファイバ内導波モードの結合による特異な偏光-導波モード依存性を観測した.さらに,量子ドットからの発光がナノ光ファイバ中に導入される際の金ナノ球による増強効果を観測した.
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