研究課題/領域番号 |
17K18755
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白石 誠司 京都大学, 工学研究科, 教授 (30397682)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / ホール効果 / 絶縁膜 |
研究実績の概要 |
本提案のキーとなる技術が、強磁性層とトポロジカル絶縁体に挿入する絶縁膜成長である。この絶縁膜の役割は、強磁性層とトポロジカル絶縁体の直接ヘテロ接合では強磁性層からの磁性によってトポロジカル状態が壊れる一方で、強磁性層からの磁化によって本提案で狙うホール効果を発現するためのトポロジカル絶縁体のバンドがシフトすることが必要であるために、最適な薄さの絶縁膜が必要である。そのため、ある意味での絶縁膜のfine tuningが必要となるからである。しかしながら絶縁層としてはMgOを用いて研究を推進したが、現時点ではfine tuningを成功させるに至らず、狙ったホール効果を観測するには現時点では至っていない。
一方で、この絶縁膜は並行的にすすめているトポロジカル状態の電気計測及びトポロジカルスピン偏極のセンシングのための技術開発においてはトポロジカル絶縁体表面の酸化を防ぐ意味で非常に重要であることが徐々に解明されてきた。トポロジカルスピン偏極・センシングそのものはこれまで150K程度で失活していたトポロジカル性(これはバルクからの熱励起キャリアの寄与によるものなのでトポロジカルギャップを十分に大きくできない現状では不可避である)を室温でもセンシングすることに成功し、トポロジカル性を有する材料で汎用的に用いられる手法であることを証明でき、さらに結晶トポロジカル絶縁体やトポロジカル超伝導体への発展も可能な手法であることを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目標とするトポロジカルプレーナーホール効果の観測に至らなかったことが最大の理由である。並行的に進めている研究は概ね順調に進んでいるが、本丸の攻略が進まなかったことは反省点である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に絶縁膜MgOの成長の遅れが(MBE装置のトラブルで)生じたために全体に計画が遅れてしまった。今後は遅れを取り戻すべく、懸案のMgO絶縁膜の薄さの最適化による強磁性体とトポロジカル絶縁体の間の緩やかな磁気結合を許すfine tuningの達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
MgO絶縁膜成長のための成長装置の立ち上げが装置トラブルのために遅れたため(このトラブル自体は1年目に生じており、既に昨年度の実績報告書に記載済み)。次年度は本提案で研究するトポロジカルプレーナー効果および波及効果として得られたトポロジカル性の新しい計測手法について、それらと関連する当該領域の最新潮流を調査しながら本提案を成功裏に遂行するためのMgO絶縁膜成長条件の最適化を継続的に行う。
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