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2019 年度 実施状況報告書

非破壊パルス強磁場磁束濃縮法による超100T高感度磁化測定

研究課題

研究課題/領域番号 17K18758
研究機関大阪大学

研究代表者

鳴海 康雄  大阪大学, 理学研究科, 准教授 (50360615)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2021-03-31
キーワード非破壊パルス強磁場 / 磁束濃縮器 / 磁化測定 / 低温
研究実績の概要

100テスラの磁場領域においては、結晶場分裂に起因した低スピン-高スピン転移や高温超伝導体の上部臨界磁場など多彩な興味深い磁場誘起現象の観測が期待される。しかし現在の磁場発生技術では、100テスラを越える磁場を電磁石(コイル)の破壊無しに発生する事はできないことから、観測精度の問題や実験それ自体が非常に限られた施設においてのみ実施可能といった事情から、選ばれた研究課題にのみ100テスラ領域の実験技術が適応されているのが現状である。本研究では、装置の破壊を伴わない非破壊の磁束濃縮法によるこれまでに無い新しい強磁場発生技術を元にして、100テスラ領域における繰り返し可能で精密な磁化測定技を確立することで、100テスラ領域の磁気測定を広く一般的に利用可能とする。
これまでに、本研究のために新たに開発した磁場発生の持続時間が約0.5ミリ秒のサブミリ秒のパルス電磁石に、本磁場発生技術の要となる磁束を非破壊で閉じ込める為の磁束濃縮器を組み込むことで、最大300パーセントまで磁場強度を増幅できることを確認している。ただし、磁場強度の増加とともに増幅率の低下が見られたことから、本年度は高磁場領域でも増幅率の低下が抑えられるような磁束濃縮器の構造の最適化のための研究を進めた。平行して、低温での磁化測定実験において必要となる繊維強化プラスチック製のクライオスタットの試作を行い、低温でもリークすることなく断熱真空を維持しヘリウム温度まで冷却出来ることを確認した。さらに、本実験と組み合わせることが可能な新しい方式による1K以下に温度を下げる冷凍技術の試験を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

年度の当初に主たるテーマとしていた、高磁場域における磁束濃縮率の低下を改善するための磁束濃縮器の構造の最適化に関して、顕著に特性を向上させることが出来なかった。研究代表者が所属する研究室では、磁化、電気抵抗、分光などの標準的な実験が実施可能はパルス電磁石を常時複数台運用し、研究室内での利用だけで無く、研究室外の学内のユーザーから全国のユーザーにまで広く共同利用に装置を供している。このような状況で、この1年ほどの間に、想定を越えたパルス電磁石の故障が頻発し、磁場発生装置の主担当である研究代表者が電磁石の復旧に対応するために、当該研究に十分の時間を確保する事ができなかった。このことが、磁束濃縮器開発に遅れが生じた主たる理由である。付帯技術ではあるが研究に不可欠である低温技術の開発に関しては、担当する学生が別途推進していたため一定の成果が得られている。しかし、主要テーマである磁場発生技術開発の遅れは重大で有る事から、総合的に遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

前項のような理由から、補助事業期間延長の申請を行って、最終年度を1年延ばして研究を行うことが承認されている。本年度はまず、到達磁場は最終目的に達していないが、本研究において初めて実証した磁場発生技術はこれまでに無い新しいアイデアに基づくものであることから、現在までの成果をまとめた形での論文投稿を進める。その上で、発生磁場向上のための磁束濃縮器の試作研究を進めながら、それと平行して実際に磁化検出システムをパルス電磁石に組み込んで実測定を可能にする技術を確立する。そのために、現在のサイズをスケールアップした構造のパルス電磁石を開発する。試料温度は液体窒素による77 ケルビンとして、測定系構造の最適化を行い、その上で液体ヘリウム冷却による4.2ケルビンでの強磁場磁化測定を実現する。これら実験ベースの研究と平行して、有限要素法やMathematicaなどの計算プログラムを用いてのシミュレーションを行い、理論ベースでの構造の最適化とそれによる到達可能最大磁場の推定を行う。これにより、実験ベースの研究遂行が長期的に困難となった場合においても、理論研究によって最大限の成果を達成する。

次年度使用額が生じた理由

当該年度に実施予定の主要な研究課題であった磁束濃縮器の開発に大きな遅れが生じることとなったため、その製作の為の予算と応用研究のための予算の執行が滞ることとなり、次年度使用額が生じることになった。次年度使用額の執行計画としては、現在利用可能な磁場領域をベースにしての応用研究を実現するための装置製作のために、材料費等の消耗品、製作のための加工費として予算執行を先行して進める。また平行して推進予定の磁場発生シミュレーションのためのコンピュータ、ソフトウエアをこの予算により整備する。この時点で十分に成果を確保したうえで、さらに最大磁場向上のための試験実施のために装置製作のために費用を割り当てる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Angle-dependent nontrivial phase in the Weyl semimetal NbAs with anisotropic Fermi surface2020

    • 著者名/発表者名
      M. Komada, H. Murakawa, M. S. Bahramy, T. Kida, K. Yokoi, Y. Narumi, K. Kindo, M. Hagiwara, H. Sakai, and N. Hanasaki
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 101 ページ: 045135-6

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevB.101.045135

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 4Heを用いた1 K以下極低温におけるパルス強磁場磁化測定装置開発2020

    • 著者名/発表者名
      松崎大亮, 佐藤和樹, 鳴海康雄, 竹内徹也, 萩原政幸
    • 学会等名
      日本物理学会第75回年次大会
  • [学会発表] パルス強磁場下における1K以下極低温装置開発2019

    • 著者名/発表者名
      松﨑大亮, 佐藤和樹, 鳴海康雄, 竹内徹也, 萩原政幸
    • 学会等名
      物性研短期研究会/強磁場科学研究会

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公開日: 2021-01-27  

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