研究課題/領域番号 |
17K18765
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
是枝 聡肇 立命館大学, 理工学部, 教授 (40323878)
|
研究分担者 |
藤井 康裕 立命館大学, 理工学部, 助教 (50432050)
野竹 孝志 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 研究員 (70413995)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | 第二音波 / テラヘルツ波 / 量子常誘電体 / 熱波動 / ソフトモードフォノン |
研究実績の概要 |
本研究では,近年分担者らによって開発が進められている高強度テラヘルツ波光源の同調可能範囲(約 1~3 THz)が低温領域でのソフトモードの周波数域をカバーできることに着目し,高強度テラヘルツ波レーザーによって赤外活性なソフトモードを共鳴励起して,その状態密度を人為的に増大させ,熱励起下では実現が困難な熱波動(第二音波)の理想的な存在条件を引き出すことを計画している. 平成29年度は立命館大学グループと理研テラヘルツ光源開発グループとの間の研究打合せを進め,量子常誘電体におけるソフトモード誘起型第二音波の物理的機構,および可搬型テラヘルツ光源の性能と開発状況について情報共有を行った.また,その知見に基づき,予備実験として,薄片化した量子常誘電体チタン酸ストロンチウム試料において,テラヘルツ光透過率の温度依存性を測定した.その結果,量子常誘電体チタン酸ストロンチウムでは,(i) テラヘルツ光源の同調範囲において,テラヘルツ光の反射率が高いこと,(ii) それと同時にソフトモードがテラヘルツ光で強制振動されていること,(iii) 温度降下ともにソフトモードの共鳴周波数が低下すること,を実験的に確認できた. この結果は量子常誘電体チタン酸ストロンチウムにおいて,テラヘルツ光の照射によってソフトモードフォノンをほぼエネルギーロスなく強制振動できることを示しており,極低温下でソフトモード誘起型第二音波をエンハンスできる可能性を確認できたものと認識している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子常誘電体チタン酸ストロンチウムにおいて,(i) テラヘルツ光源の同調範囲において,テラヘルツ光の反射率が高いこと,(ii) それと同時にソフトモードがテラヘルツ光で強制振動されていること,(iii) 温度降下ともにソフトモードの共鳴周波数が低下すること,を実験的に確認できた. この結果は量子常誘電体チタン酸ストロンチウムにおいて,テラヘルツ光の照射によってソフトモードフォノンをほぼエネルギーロスなく強制振動できることを示しており,極低温下でソフトモード誘起型第二音波をエンハンスできる可能性を確認できたものと認識している.
|
今後の研究の推進方策 |
ソフトモードの共鳴周波数に同調可能な高強度テラヘルツ波レーザー光源を用いて,ソフトモードを大振幅で強制振動させ,熱抵抗に関与しない Γ 点近傍のフォノンの状態密度を極度に増大させながら,誘導ブリルアン散乱過程によってコヒーレントな熱の波動(第二音波)をこれまでより遥かに効率よく発生できることを実験的に示したい.具体的には,ポンプ光を空間光変調器のホログラムに入射し,その共役光を試料内に結像させる.この変調器はパソコンによって瞬時にパターンを描き換えできるので,熱波動の波長(周波数)や位相を効率よく制御でき,また,多彩な二次元の初期温度パターンも試料に描き込める.このような温度パターンはいわば「熱のホログラフィ」であり,これまでの干渉計を用いた単純な一次元熱回折格子よりも熱波動の位相の情報を反映させやすいため,熱の波動性をより顕著に引き出すことが可能であると考えている. さらに,従来の過渡的熱グレーティング法による第二音波励起に加えて,過渡的熱レンズ法による励起も試みる計画である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は研究打合せと予備実験を進め,本実験に必要な設備や備品等の見きわめを行った.その結果,実際に本実験に必要な備品を購入し,予算を支出をする時期が平成30年度以降となった.
|