研究課題/領域番号 |
17K18774
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
片岡 洋祐 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, チームリーダー (40291033)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / 中枢神経 / 幹細胞 / 増殖 / 骨髄 |
研究実績の概要 |
大気圧プラズマ照射により大脳皮質に出現する未分化細胞を同定する研究を進めた。特に、成獣哺乳類(ラットやマウス)を対象に、麻酔下に頭頂部頭蓋骨の一部を除去して大脳皮質へ大気圧プラズマを1分間直接照射し、3日後に灌流固定した。そして、プラズマ照射対象領域の大脳皮質内で幹細胞マーカーを発現し、活発に増殖する細胞を同定した。そうした細胞の多くが未熟なグリア細胞マーカーであるNG2を発現していた。また、骨髄由来の細胞もプラズマ照射領域の大脳皮質組織へ侵入していることがわかった。一方、これまで実施してきたプラズマ照射実験は、頭蓋骨の一部を除去し、大脳皮質組織へ直接照射したものであった。しかしながら、こうした未分化細胞や増殖細胞の出現は、頭蓋骨を除去することなく、骨の上からプラズマを照射しても誘導されることがわかった。そこで、電気抵抗の低いアルミホイル、さらに、電気抵抗の高いラテックス素材を頭蓋骨上の載せ、その上からプラズマを照射する実験を試みた。その結果、アルミホイルを設置してもプラズマの大脳皮質組織への作用は変わらず発揮されること、ラテックス素材を設置するとその効果が小さくなることがわかった。また、プラズマ照射による組織への作用は温度上昇によるものではないことも示された。現在、プラズマにより誘導される細胞集団の未分化度などを確認するために関連する遺伝子発現の解析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、大気圧プラズマの作用として活性酸素種などの生成による生体組織中の化学的反応系によるものが主な経路であると考えていた。ところが、電気抵抗の低いアルミホイル、さらに、電気抵抗の高いラテックス素材を頭蓋骨上の載せ、その上からプラズマを照射する実験を試みたところ、アルミホイルを設置してもプラズマの大脳皮質組織への作用は変わらず発揮され、ラテックス素材を設置するとその効果が小さくなることがわかったことから、化学的作用だけでなく、電気的エネルギーなどの物理的作用も考慮する必要があることがわかった。こうした成果は、当初の予想から外れるものの、プラズマの生体への作用を研究する上でメカニズムに関わる根本的な問題であり、きわめて重要であると考え、上記実験を追加した。
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今後の研究の推進方策 |
大気圧プラズマの生体への作用について、化学的メカニズムのみならず、物理的メカニズムも考慮に入れて研究を進める予定である。また、未分化細胞の起源を引き続き探りつつ、当初予定していたプラズマ照射によって大脳皮質組織から得られたスフェア形成細胞の多分化能について検証する。また、大気圧プラズマによる生体内(in vivo)組織再生の可能性を検証するため、中大脳動脈領域を対象とした虚血性神経細胞死モデルをラットで作出し、大脳皮質への大気圧プラズマ照射による組織再生効果を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、大気圧プラズマの作用として活性酸素種などの生成による生体組織中の化学的反応系によるものが主な経路であると考えていたが、化学的作用だけでなく、電気的エネルギーなどの物理的作用も考慮する必要があることがわかった。こうした成果から、当初予定していた研究内容の進捗が少し遅れたことにより、次年度使用額が生じた。今後、大気圧プラズマの生体への作用について、化学的メカニズムのみならず、物理的メカニズムも考慮に入れて研究を進める予定である。また、未分化細胞の起源を引き続き探りつつ、当初予定していたプラズマ照射によって大脳皮質組織から得られたスフェア形成細胞の多分化能について検証する。また、大気圧プラズマによる生体内(in vivo)組織再生の可能性を検証するため、中大脳動脈領域を対象とした虚血性神経細胞死モデルをラットで作出し、大脳皮質への大気圧プラズマ照射による組織再生効果を評価する。
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