研究課題
大気圧プラズマ照射によって成獣ラットやマウスの大脳皮質で誘導される未分化細胞の起源を同定する研究を実施した。特に、数ミリメーターを越える広い領域を電子顕微鏡の高解像度で組織観察できる広域電子顕微鏡を用いた観察を実施した。大気圧プラズマをラット大脳皮質へ1分間照射し、3日後に大脳皮質照射領域に生じた直径1-2 mmの組織構造変化を広域電子顕微鏡を用いて観察したところ、照射領域に多数の骨髄系の細胞の侵入を認めた。また、CAG-GFPマウス由来骨髄移植マウスの大脳皮質へ大気圧プラズマを1分間照射し、数日後に大脳皮質組織を観察したところ、GFP陽性細胞の存在を確認した。さらに、プラズマ照射した大脳皮質から組織を採取し、培養系にて作製したスフェアにもGFP陽性細胞が多く含まれ、プラズマ照射によって大脳皮質内に出現する未分化細胞群に、骨髄系の細胞が含まれることが明らかとなった。また、大気圧プラズマ照射後の大脳皮質から作製・培養したスフェアから、神経系以外の細胞も作製可能かどうかを確認するため、スフェア形成細胞から膵β細胞への分化誘導を試みており、本研究は継続中である。一方、ラット大脳皮質へのプラズマ照射が、どの程度の組織再生能を発揮するかを検討するため、ラット片側中大脳動脈の支配領域に虚血負荷を施し、数日後に大気圧プラズマを虚血領域へ照射する研究も実施した。プラズマ照射した虚血負荷組織を組織学的に観察したところ、未分化マーカーを発現した細胞が多数観察された。こうした結果は、大気圧プラズマ照射が組織再生にも応用できる可能性を示唆しており、さらに詳細は研究を継続する。
3: やや遅れている
平成29年度に実施していた、大脳皮質への大気圧プラズマ照射後に出現する未分化細胞の起源の同定研究が長引いたことによる。特に、新技術である広域電子顕微鏡を本研究へ導入したため、本来、平成30年度に実施する予定であったスフェア細胞からの神経系以外の細胞への分化誘導実験の開始時期が遅れた。
げっ歯類大脳皮質への大気圧プラズマ照射によって作製されたスフェアから、神経系以外の細胞への分化誘導を試みる研究(現在実施中)と、中枢神経へのプラズマ照射後の神経ネットワーク再生研究とを同時進行させることで、本来の研究計画を最終年で完了する。
当該年度に実施予定であったスフェアからの神経系以外の細胞への分化誘導研究の開始が遅れたために、次年度使用額が生じた。次年度には、当該年度に実施予定であった分化誘導研究(現在既に実施中)と、中枢神経へのプラズマ照射後の神経ネットワーク再生研究とを同時進行させることで、本来予定していた研究計画を最終年ですべて実施する計画である。
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