研究課題/領域番号 |
17K18777
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市川 温子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (50353371)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 希ガス検出鋳 / 陽イオン検出 |
研究実績の概要 |
キセノンガスによるタイムプロジェクションチェンバー(TPC)検出器において、陽イオンを検出する新しい手法を開発する研究を進めている。キセノンガスTPCは高いエネルギー分解能を持つことが可能な検出器であるが、信号に用いる電離電子の拡散が大きいため位置分解能は高くない。電離電子とともに生成される陽イオンはドリフト中の拡散が小さいと予想される。陽イオンの検出法が確立されれば、暗黒物質やニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊崩壊探索に応用可能な、エネルギー分解能に加え空間分解能においても秀でたタイムプロジェクションチェンバーの実現へとつながる。 本研究では陽イオンの検出に、負電圧を印加したワイヤ電極に陽イオンが到達した際に放出される二次電子が電場により逆方向に加速されキセノンガスと衝突し脱励起光を発生するという過程を用いる。まず、陽イオンによる信号を初観測することが目標に簡易セットアップの構築をした。ワイヤ電極の直径と必要とされる電圧の関係を調査し、また有限要素法による電場計算を行い、直径30ミクロンの金メッキタングステンワイヤに3kVの電圧を付加することとした。ワイヤが電場から受ける力を考慮し、ワイヤに適切なテンションをかけて固定している。アルファ線源、接地電極、ワイヤ電極、ガス容器、光電子増倍管、ガス系統、高電圧電源等からなる測定装置を製作した。キセノンガスの脱励起光は、波長170 nmの真空紫外光のため光電子増倍管は真空紫外光に感度があり、また低アウトガスの実績のあるものを用いている。現座、この簡易セットアップによる測定を開始した所である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガス系統に用いる特殊なバルブの納期が5か月と予想外に長かったことが一因である。 セットアップ完了後、1,2回目の測定を行った所、まだ信号が見えていない。光電子増倍管に付加している電圧が電場を歪めている可能性があるため、その対応を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、陽イオンによる信号が見えていない原因を突き止める。光電子増倍管からの電場の遮蔽、ワイヤの固定法の改良、別素材のワイヤでの試験などを行う予定である。 その後、当初の予定通り、陽イオンのドリフト速度や二次電子放出効率などの基礎的な物理量の測定へと進む。
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次年度使用額が生じた理由 |
簡易セットアップで陽イオンの信号を検出できることを確認した後、本格的な実験セットアップを製作する予定であった。しかし、7欄に記載したように、簡易セットアップによる陽イオン検出の最初の原理検証でまだ試行錯誤を行っており、本格的な実験セットアップの製作に進めていない。 今年度は、この原理検証の本実験セットアップの製作および当初予定の多チャンネル、マルチワイヤの検出器を製作で予算を使用する予定である。
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