研究課題
我々は、シリカコーティングをCFRP表面に施すことで、CFRPに防湿効果を付与する研究開発に取り組んだ。CFRPへのコーテイングは平坦化層を形成したのち行なっている。また、平坦化層を形成することでCFRP表面に鏡面が形成できると考え、その可能性についても評価を行なった。なお、防湿層の形成は協力企業のもと実施している。【防湿効果】CFRPの課題の一つに吸湿による膨潤変形がある。この変形は光学部品としてCFRPを利用する場合の致命的な欠点の一つである。我々は、先に述べたシリカコーテイングを施したサンプルを作成し吸湿試験を実施した。この実験では、CFRP基板を60℃、RH100%の環境に放置しており、通常の実験室環境の約100倍の加速試験に相当している。コーティング処理を施していないサンプルと比較したところ、水分のCFRP内への拡散率は1/500であり良好な結果を得た。これは、我々が以前行った防湿フィルムを貼った場合よりも小さい値であり、水分透過率0の金属箔を貼った場合とほぼ等しいものであった。一方、試験開始から約600時間経過した頃から表面にひび割れなどのダメージが発生し、約800時間から吸湿率が向上していった。800時間は実験室環境で9年に相当し、ほぼ実用段階にはいったと考えている。【光学材料としての利用の可能性】平坦化層の上にシリカコーティングすることで、光学材料として応用が可能であると考え、その可能性について調査した。平坦化層の形成はスピンコートで行なっているために、通常、その痕がはっきりと見受けられる。この開発では、その痕ができるだけ減るように、スピンコートの条件出しを行なっている。スピンコートの痕は見られるもののレーザー顕微鏡で評価した表面粗さは10~20 nmであり、可視光での反射像も確認できた。鏡面としての利用に一歩のところまで近づいている。
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Proceedings of the SPIE
巻: 10699 ページ: 106993R
10.1117/12.2312037