本研究計画では、高感度化を目指し大型化する宇宙マイク背景放射偏光実験に対応すべく、人工的に光物性を設計、作成することができるメタマテリアル方式の偏光変調器のための光学素子、半波長板を開発する。波長よりも小さい構造を誘電体に作成した場合、その部分の屈折率は真空と誘電体の屈折率の間の値を持つことになる。真空と誘電体の占める割合を調整すると自由に屈折率を設定することができ、結果として人工的に光物性を設計し作成することができる。本研究提案では、様々な加工方法を用いて、反射防止膜機能を持つ半波長板を単一誘電体から作成した。想定した光学材料は高い誘電率、低い誘電損失、さらに大型部材の入手性よりアルミナとした。候補としてサファイア及びシリコンも検討したが、それぞれ大型部材の入手性についてはアルミナに劣るため優先順位をアルミナの次点とし、今回の検討には含めていない。また、入手の容易性からプラスチック材も候補として試作を行った。特に、機械加工、レーザー加工、3次元プリンターの三つの手法に着目した。それぞれの手法に基づき小型サンプルを作成し加工性及び大型化を評価項目としてトレードオフを行った。特に近年の技術発展により3次元プリンターはABSやポリプロピレン、さらにはアルミナでも高精度の加工性が実現可能であり、アルミナでは3cm程度の面積に1次元溝微細加工を行い、半波長板としての複屈折性を実現した。加工精度は10um以下程度は実現可能であり、ミリ波としての光学性能には複屈折材料のサファイアと同様の位相差をより薄い厚みで実現できることを確認した。光学性能は5%以下の精度で期待される性能と一致し、この精度は測定系の系統誤差により制限されている。3次元プリンターを用いた微細加工は大型化に対してステージが準備できれば、それ以上の技術的な制約はないため、今後の発展性を本研究にて切り開くことができた。
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