研究課題
地球内部でのマグマの挙動を解明するためには、高圧下でのマグマの構造変化を理解することが重要である。本研究では主に大強度陽子加速器施設J-PARCの超高圧中性子回折装置PLANETを利用し、高圧下で1)玄武岩ガラス、2)珪酸塩融体の中性子回折実験をすることで、その構造解析を実施した。1)玄武岩ガラス:高圧発生装置にパリ-エジンバラプレスを使うことで18GPaまでの圧力条件下で中性子回折実験を行い、圧力起因の構造変化を調べた。また、比較のために同試料のX線回折実験をPF-ARのNE5Cビームラインで実施した。NE5Cでは6-6式高圧セルで試料に圧力をかけて、白色X線を使ったエネルギー分散X線回折実験を行った。X線回折と中性子回折の2つの実験結果を組み合わせることで構造の情報を補完し合い、圧力起因の玄武岩ガラスの構造変化を精密に決定することができた。特徴としては、10GPa以下では中距離構造の収縮が支配的であるが、より高圧下では徐々に短距離構造に変化が見られた。上述した研究成果は国際会議で4件、国内会議で1件発表しており、国際誌への投稿も進めている(1本:改定中、2本:準備中)。2)珪酸塩融体:6軸プレス「圧姫」で用いる試料容器・高圧セルの最適化を行い、高温高圧下で安定に中性子回折実験を続けられる高圧セル構成を構築した。それを使って、ナトリウム-アルミニウム珪酸塩メルトの中性子回折実験を圧力2GPa、温度1800Kの条件下で成功した。また、金属カプセルやダイアモンドカプセルなど様々な材質の試料容器テストを重ねており、含水マグマの中性子回折実験に取り組む準備も進んでいる。
2: おおむね順調に進展している
最初の成果である玄武岩ガラスのX線回折実験は国際誌へ投稿・改訂中である。J-PARCのPLANETで高圧下での中性子回折実に成功し、玄武岩ガラスの構造解析をするという目的も達することができた。この研究成果も投稿準備中である。珪酸塩ガラスの中性子回折実験はシリカ(SiO2)ガラス以外ではほとんど報告されていなく、本研究で調べた玄武岩ガラスの構造からSi4+以外の陽イオンが珪酸塩ネットワークに及ぼす影響の理解に繋がる新たな知見を得ることができた。また、含水マグマの中性子回折実験を着手するための準備も順調に終えることができた。
含水マグマの中性子回折実験を通して、マグマ中の水素位置の圧力依存性を明らかにする。含水マグマの高密度化プロセスを解明することで、地球内部で滞留するマグマの重力的安定性をの議論していく。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 14件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 20件、 招待講演 2件)
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