研究課題
本研究は、海域の広域地殻変動場を計測するためのGPS音響結合方式(GPS-A)の海底測地技術を、海底断層などを挟んだ短基線の歪み検出に転用できるかどうかを実証する新たな試みである。平成30年度は、これまで観測に使用してきた日本海溝に設置済みの機器の回収、さらに温度擾乱の補正効果の比較のために紀伊半島沖に設置した海底間音響測距機器の回収、そのデータ解析を実施し、GPS-A方式の短基線測距への転用の可能性を判断する。平成30年8月に実施した観測航海で、日本海溝に設置済みであった音響機器3台セットからなるGBTサイトで最後のキャンペーン観測を実施し、その後3台とも自己浮上回収に成功し、長期設置後の機器の状態を確認できた。ここまでで得られた大量の音響測距波形の相関処理信号について、雇用した研究支援者の助力を得つつ相互比較を行い、高精度相対走時を読み取るための判定基準を策定した。その基準に基づいた自動読み取りプログラムを作成することで、条件を変えながら全波形を自動で処理し、最適な条件を求めることに成功した。さらに、より温度擾乱が大きいと予想される紀伊半島沖に設置していた海底間音響測距装置3台も平成31年1月の航海で回収した。内部に保存していた連続観測の音響波形データを抽出し走時読み取りを行ったほか、併設の高精度温度計の高サンプリングデータから、温度場の海底面での2次元的な分布の時間変動の挙動について把握し、それが本研究の目的であるGPS-A方式の短基線測距へどの程度影響するか見積もった。その結果、温度擾乱が大きい場では、補正しきれない短時間の測位精度の乱れが残るものの、数時間のキャンペーン観測により、その影響を通常の海底間音響測距観測の精度と同様にまで高められることがわかった。また、海底間音響測距観測とくらべ、2台のペアで相互の3次元の相対運動をモニターできるメリットが確認された。
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Geophysical Research Letters
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