研究課題/領域番号 |
17K18812
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 研究員 (80616433)
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研究分担者 |
奥住 聡 東京工業大学, 理学院, 准教授 (60704533)
村主 崇行 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 特別研究員 (50599149) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 天体衝突 / 物質放出 / 衝突雷 / 粉体相互作用 / 電荷分離 / 絶縁破壊 / 高速度衝突実験 / N体計算 |
研究実績の概要 |
平成30年度は昨年度までの結果を受け, (1)粉体衝突実験時の多波長計測を実施, (2)放出物カーテンを表現する数値モデルの構築を行った. 以下に得られた成果をまとめる. (1の成果)昨年度の粉体標的を用いた衝突実験で, 放出物カーテン中に無数の光点が発生することが確かめられていた. 今年度はこの光点の素性を探るべく多波長光学計測を実施した. その結果, (i)自発光の主体は~2000 Kの黒体放射であること, (ii)高エネルギー現象に特有の周辺ガスや蒸発した粉体組成のプラズマ由来の発光は観測されないこと, (iii)光点の運動は放出物流に沿っていること, がわかった. このことからこの光点は放電のような高エネルギー現象でなく, 衝突時の圧縮加熱に起因する可能性が高いことがわかった. (iii)の結果は本研究課題とは直接関係しないが, 光点を室内衝突実験時に自発的に発生するラグランジアントレーサとしてみなせる可能性を示唆するものである. 画像解析と組み合わせることで, 衝突掘削過程を観察するための新しい手法として利用できる. 挑戦的研究によって, 予期せぬ科学成果が得られた例と言えるだろう. (2の成果) 数値衝突計算コード「iSALE」の出力をN体計算「REBOUND」に渡すことで放出物カーテンの構成粒子の運動を表現する数値モデルを構築した. 「REBOUND」は構成粒子の運動方程式を数値的に積分し, 衝突したと判定された場合は計算で入力している反発係数に応じて速度ベクトルを変更する. 「iSALE」の出力値に適当なランダム速度を付加して, 「REBOUND」で個々の粒子の運動を追うことで, 室内実験で観察されるような放出物カーテンのメッシュパターンを再現できることがわかった. 「REBOUND」の運動方程式に周辺ガスによる減速や, 電荷分離式を実装するテストも実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに粉体衝突現象の多波長観測と, 放出物カーテンを表現する数値モデルの基礎の構築が完了した. 研究分担者の離脱により当初予定していたた計算を行うことができなくなった. 同等の計算を実行可能なオープンソースコードの選定とソースコードの改良に時間を要したため, 当初の計画から遅れていることは否めない. そうではあるが, 2種類の数値計算コードの間の受け渡し手順を確立することができており, ソースコードを改良し必要な物理過程を取り入れる手順を確認することができている.
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今後の研究の推進方策 |
今後も実験と数値計算の両側面から衝突雷の発生可能性を探る. 具体的には磁性鉱物を含む粉体試料を用い, 無磁場中での衝突実験を実施する. 衝突実験で光点として観察される物質を実験後に回収し, 残留磁化計測を実施する. これまでに光点は初期の粉体の構成サイズよりも大きくなるため, ふるいを用いて選別, 回収可能であることを確かめてある. 電荷分離が起きていれば, 残留磁化が残ることが期待され, 残留磁化強度から電荷分離度に制約を加えることができる. 数値モデルに大気との相互作用モデルと電荷分離モデルを実装し, 実験結果と調和的になるパラメータを求める. ここでのパラメータは衝突時の電荷輸送効率である. 天然衝突の空間スケールにおける計算を実施し, 衝突雷の発生条件を調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の離脱により当初予定していた数値計算を実行することができなくなった. 同等の計算が可能なオープンソースコードの選定, ソースコードの改良に時間を要したため研究の進展が当初の予定よりも遅れた. 平成30年度はこのような基礎の構築に時間を要したため研究経費の一部を翌年度に繰り越すこととした. 最終年度はさらなる数値コードの改良を実施し, 計算資源を増強することにより, 網羅的な数値計算を実施する予定である. また当初の計画には入っていなかった実験試料の残留磁化計測を実施する必要性が生じたので研究チーム内で予算の再分配を行う.
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