研究課題/領域番号 |
17K18813
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
船守 展正 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (70306851)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 水ガラス / 含水SiO2ガラス / SiO2ガラス / 非晶質 / 相転移ダイナミクスモデル / 粘性測定 / 小角X線散乱測定 / X線光子相関分光法 |
研究実績の概要 |
本研究の3年目である令和1年度は、当初計画では最終年度となっていた。しかしながら、諸事情により、当初目的である「X線光子相関分光法(XPCS)による粘性測定の実現」には至っておらず、1年間の期間延長をすることとした。昨年度に設計したXPCSのための試料容器については、実際に製作してフォトンファクトリー(PF)のBL-18Cで試験を完了しており、国内でXPCSが唯一可能なSPring-8に持ち込んでXPCS粘性測定に挑戦する直前まできている。本研究は、広義には、水-ケイ酸塩系のダイナミクスの研究であるが、その点では、幾つかの大きな進展があった。含水SiO2ガラスの構造については、13wt.% D2O 含有のSiO2ガラスを試料として、XPCSの1歩手前のSAXSと、X線および中性子の回折の測定を実施することで、SiO2リッチ母相とD2O(H2O)リッチドメイン(10nm程度以下のサイズ)に分離していることを明らかにし、論文にまとめて公表した。また、SiO2ガラスの相転移ダイナミクスについては、エネルギー準位や活性化エネルギーの幅を定式化したモデルにより各種の実験データを再現することに成功し、現在、論文としてまとめる作業を進めている。関連して、PFのBL-18CでSiO2ガラスの相転移についての時間分解実験を開始した。さらに、XPCS粘性測定の最初の試料とすることを予定している水ガラスについて、その構造を理解する鍵となる特徴的な低Q回折ピークの起源を探るため、計算機シミュレーションの専門家との共同研究を開始した。回折パターンの再現に成功し、現在、シミュレーション結果の真偽について検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水-ケイ酸塩系のダイナミクスの研究という観点では幾つかの大きな進展があった。一方、当初目的であるXPCS粘性測定の観点では、所属機関での予備的な測定までは完了したものの、実際にXPCSを実施できていない点が残念である。
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今後の研究の推進方策 |
水ガラスを試料としたXPCSの測定をできる限り早く実施する。また、非晶質物質の相転移ダイナミクスのモデルや水ガラスの構造に関する研究成果について、論文として公表する。当初計画に比べて遅れている主な原因は所属機関の組織改編とそれに関連する職務内容の変更にある(令和1年度よりPFの実験施設長を務めている)。 令和2年4月1日付で、同じ研究分野の若手が助教としてPFに着任した。従来の共同研究者に加え、本助教からの協力も得て進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の組織改編とそれに関連する職務内容の変更により当初計画に比べて遅れが生じていることが原因である。新助教を含む共同研究者からより多くの協力を得ることで、今年度内に目的を達成するよう努力する。
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