研究課題/領域番号 |
17K18814
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
牛久保 孝行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 技術研究員 (10722837)
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研究分担者 |
藤谷 渉 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 助教 (20755615)
池原 実 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90335919)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 炭酸塩 / 酸素同位体 / SIMS / 耳石 / 有孔虫 / 隕石 |
研究実績の概要 |
マルチコレクター型二次イオン質量分析計CAMECA IMS 1280-HRを用いて生体鉱物(クロマグロ耳石、有孔虫炭酸塩殻)の酸素2同位体比(18O/16O)分析、隕石試料の炭酸塩の酸素3同位体比(18O/16O, 17O/16O)と炭素同位体比(13C/12C)の分析研究を行った。また、確立した試料作製と分析技術を用いて隕石及び南極微隕石試料の珪酸塩粒子の酸素3同位体比分析も行った。 クロマグロ耳石研究では50個体以上の成魚耳石試料の酸素同位体比分析を完了し、1)耳石試料分析値の補正係数が約0.3パーミルで安定していること、2)産卵地が南西諸島沖太平洋の個体と対馬沖日本海の個体で孵化水温が1℃程度異なる可能性があること、を明らかにした。成果の一部は2018年度に国際会議で報告し、現在は論文を準備中である。有孔虫炭酸塩殻研究では、南大洋の底生及び浮遊性有孔虫試料の炭酸塩殻の観察と酸素同位体比分析を実施した。成果は研究協力者である高知大学大学院生の修士論文の中で報告している。隕石の炭酸塩試料では結晶の形態・組成と酸素・炭素同位体比の比較を行い、太陽系初期の微惑星での熱水組成の多様性を明らかにした。隕石の珪酸塩試料では原始惑星円盤で発生した珪酸塩微粒子の溶融過程における周辺環境の酸化還元状態と酸素同位体比組成を明らかにした。これらの成果の一部は2018年度に国際会議で報告したほか、最初の論文が査読中であり、次の論文も準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に確立した試料準備法と局所酸素同位体比分析法を用いて、クロマグロの耳石試料や炭素質隕石試料から示唆的な同位体比変動を見つけることが出来た。これらのデータの科学的な解釈を確かなものにするために一年間の研究期間延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
特徴的な同位体比の傾向が見えてきたクロマグロの耳石試料と隕石の炭酸塩試料の同位体比分析を特に重点的に行う。クロマグロの耳石研究では、酸素同位体比から見えてきた二系統の産卵地海水温について耳石の形態や微量元素濃度との比較研究を行い、太平洋産と日本海産の判別可能性を検討する。隕石の炭酸塩研究では、小惑星での熱水活動に関係すると思われる微量元素累帯構造と酸素・炭素同位体比との相関の有無を調べ、温度変化(同位体比平衡)と熱水流体自体の同位体比変化の両方の変化を明確に分離して議論が出来るかを検証する。有孔虫試料研究については、平成30年度に新たに採取された南大洋試料の分類が終了した後に分析試料を選定し、酸素同位体比情報に基づく南大洋における有孔虫の生息環境の検証を行う。過去二年間の取り組みを踏まえ、議論をまとめる上で不足しているデータの取得を心がけ、学会発表と論文発表の形で成果を世に出すことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的な分析試料作製と局所分析の運用を徹底する事で消耗品費の節約を図った。また、研究成果発表費用を別の研究経費から支出する事となったため、次年度使用が生じた。 追加分析の消耗品費、国内外での研究成果発表費用、論文投稿費用として活用する予定である。
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