研究実績の概要 |
2019年度には、前年度までに確立した微小一次イオンビーム(分析径約3um)を用いた同位体比分析法を応用し、隕石試料の珪酸塩鉱物と酸化物の酸素3同位体比(18O/16O, 17O/16O)と、海洋底鉱床試料の硫化鉱物の硫黄2同位体比(34S/32S)の分析研究に新たに取り組んだ。クロマグロ耳石研究については、前年度までに実施した同位体比分析の結果と共同研究者が新たに取得した微量元素濃度データを比較して、クロマグロが生息した海洋の環境の解析に取り組んだ。 小惑星で約45億年前に起きた熱水活動を知るための隕石の炭酸塩の同位体比研究では、小惑星帯に多いC型小惑星から飛来したと考えられるCMコンドライトでは、水と有機物の反応によって炭酸塩が形成したことを支持する結果が得られた一方で、さらの遠方で形成したD型小惑星から飛来したと考えられるTagish Lake隕石では、水と有機物の他に固体CO2(ドライアイス)の反応で炭酸塩が形成された事を示唆する結果を得た。これらの成果を2報の論文で報告した(Fujiya et al., 2019 Nature Astronomy; Fujiya et al., 2020 GCA)。 隕石の珪酸塩鉱物/酸化物の酸素同位体比研究では、原始惑星系円盤で形成した個々の粒子の酸素同位体比の特徴を明らかにした。 海洋底鉱床の硫化鉱物の硫黄同位体比研究では、鉱床を構成する硫化鉱物が成長するに従い硫黄の同位体比が変動していることを突き止めた。これは、鉱床の成長過程において、硫化鉱物の形成機構と硫黄の供給源が変動していることを示しており、鉱床の成長する条件に制約が与えられることが期待される結果である。
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