研究課題
本研究は、希土類元素(REE)の安定同位体分別を利用して新たな古海洋pH指標を確立することを目的としている。REEのうち、セリウム(Ce)を用いた実験から、Ceの安定同位体分別は溶存化学種が支配している事が明らかになった(Nakada et al., 2017)ことから、REEのうち2元素の安定同位体分別を測定し、pHと炭酸濃度を含んだ同位体分別式を連立方程式として解くことで古海洋のpH及び炭酸濃度指標とすることが本研究の目的である。本研究は実験室系でpHおよび溶存炭酸濃度の変化が同位体分別に与える影響を精査し、将来的に天然試料の分析から古海洋のpHおよび溶存炭酸濃度の推定指標を確立するものである。従って、REEの安定同位体比を超高精度で測定する必要がある。そこでダブルスパイク法を用いた分析を予定しており、平成29年度にはリン酸をアクチベーターに用いてダブルフィラメントで行った場合に、最も安定したビームと信号強度が得られた。平成30年度前半は、昨年度の測定条件をさらに検討し、塗布するリン酸の量の最適化を行った。後半は吸着実験を行い、まずはネオジム(Nd)安定同位体分別の分析をする予定であったが、装置の故障等で同位体比の分析までは行えていない。しかし、すでに吸着実験は行っており、あとは分析するだけの状態である。
3: やや遅れている
当初予定していたネオジム同位体比測定が行えなかったため。しかし、既に測定試料は準備できており、また、平成31年度(令和元年度)に予定しているイッテルビウムの吸着実験も順調に進んでいる。
まずはネオジムの安定同位体比測定を行い、次いで順次実験を行っているイッテルビウムの安定同位体比測定を行う。実験条件は当初の予定通りpHを4から12まで、溶存炭酸濃度を1 mMから10 mMまで変化させる。様々な分析条件下で精密に測定した固液間での吸着時の同位体分別をプロットすることでpHと溶存炭酸濃度が与える関係性を数式化する。
装置の故障に伴い測定に関する消耗品を購入しなかった。また成果発表の外国旅費を節約することができた。一方で本研究では試料の前処理、元素の化学分離に伴って定常的に発生する大量の容器洗浄に対応するため、当初は予定になかったパートタイマーを次年度末まで雇用することとなったため、引き続きその人件費として使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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