本研究においては,地球温暖化防止対策に資する次世代エネルギー機器の高効率化に不可欠な,機器動作環境の過酷化(高温高負荷化)に起因して生じる構造材料の強化微細組織のナノスケールでの崩壊過程の大気環境中における可視化技術の開発に挑戦した.地球温暖化防止対策を推進する上で,二酸化炭素排出の主要因であるエネルギー機器の高効率化は必須課題であり,動作環境の高温化と例えばタービン運転速度の高速化に伴う機器動作環境における力学的負荷の増加は避けられない.この使用環境の過酷化に伴い,機器の動作環境において構造材料内部で原子拡散が活性化し,強化機構が崩壊し突然破壊が生じるという現象の発生が研究レベルでは報告され始めている. 本研究では高輝度白色光源を使用して構造材料表面を観察し,反射光を高精度フィルターを導入して波長選別し,各波長領域の画像を分離計測,比較することで代表元素の分布の変化を大気中で観察する技術の開発に成功した.金属元素固有の反射率の波長依存性に着目し,Ni基耐熱合金の非破壊組織観察,およびCr,Alの分光反射スペクトルを測定した.まず波長400~500nmでNiのスペクトル強度が他の元素と比較して低下していることに着目し,開発した観察系で450 nm近傍の反射強度分布を測定することで大気中での微細組織変化観察が可能なことを実証した.次に耐熱合金系に添加されている代表元素としてCr,Alおよびそれらの酸化物についてスペクトル分析を行い,金属とその酸化物でそれぞれ特徴的なスペクトル形態変化が生じること,試験片表面の表面粗さは,スペクトル形態には著しい影響を及ぼさないことなどを確認した.さらに塑性変形の信仰に伴う表面粗さの変化も検出することに成功した.したがって本評価手法を適用することで,合金中の元素の偏析や局所酸化現象など大気中で微細組織変化観察を実現できる見通しが得られた.
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