昨年度までの結果により,セラミクスの自己粉砕は,母材酸化物に含まれる微小量の過剰酸化ランタンが水酸化する際,水酸化に伴う大きな体積膨張により,自身の破壊さらに母材酸化物に破壊を引き起こすことがわかった.微粉化(破壊)の際の局所応力状態を簡便な式を用いて示し,臨界応力・き裂長さを決定した.しかしながら,文献調査によると,自己粉砕の主原因である酸化ランタンの機械的特性に関する情報が極めて限定的であり,正確な応力分布の把握および破壊機構の推定に困難を要した.(これは,酸化ランタンが極めて早い速度で水酸化するためであると考えられる.)そこで本年度は,自己粉砕の主要因である酸化ランタン自身に着目し,水酸化に伴う自己粉砕機構および力学的特性の経時変化を調べた.水酸化はX線回折によるピーク強度比より評価した.自己粉砕過程は,走査型電子顕微鏡による観察および目視により評価した.また,ひずみゲージを用いた一軸圧縮試験により,各水酸化過程でのヤング率および圧縮強度を評価した.これらの試験を,五酸化リンを用いた低湿度下で保管・切断・分析・測定を行うことにより,酸化ランタンの水酸化度と粉砕過程の経時変化,さらにそれらと機械的特性の関係を明らかにした.水酸化度の経時変化および水酸化度から機械的特性を予測するための式を提案した.これらの結果および昨年度までの結果を用いることで,母材酸化物に存在する極微量の酸化ランタンの水酸化に伴う急激膨張により発生する自己粉砕機構の詳細な議論が可能となる.
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