本研究では、ダイヤモンド内部に超短レーザを集光することで焦点近傍のみでグラファイト化させること,さらにグラファイトのみをエッチングにより溶解することで,半導体材料としてダイヤモンドを利用する際に必要となるスライシング技術の実現を目指している. 本年度はダイヤモンド裏面をピコ秒レーザにより加熱しグラファイト化させた.このグラファイト部分がレーザを吸収することから,光軸と同方向に焦点を走査させることでグラファイト部分をレーザ光源に向かって成長させた.この様子をin-situ観察できるシステムを構築し,観察を行った. その結果,ダイヤモンドの内部に直径10ミクロンほどの変質線を形成できた.この変質線のグラファイト化の度合いを電気伝導率から評価した.実験パラメータを変化させてその影響を評価した.走査速度を変化させて加工行った結果,走査速度の増加に伴い変質線の導電性が上昇した.パルスエネルギを変化させて加工行った結果,パルスエネルギの減少に伴い導電性が上昇した.昨年度行ったフェムト秒レーザにより形成した変質線を比較すると,ピコ秒レーザにより生成した変質線の方が導電性が高かった.これらの結果から最適な条件をあきらかにした. さらに,変質線を多数並べて形成することで面状の変質層の形成を試みた.その結果,面状の変質層が形成できた.この変質部に対して,ラマン分光分析により結晶構造の評価を行い,導電率の結果と合わせ,内部の変質の状況を総合的に検討した.
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