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2017 年度 実施状況報告書

近接場光顕微鏡による超音波の励起

研究課題

研究課題/領域番号 17K18822
研究機関長岡技術科学大学

研究代表者

松谷 巌  長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (00514465)

研究分担者 石橋 隆幸  長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (20272635)
研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワード近接場光 / SNOM / 超音波
研究実績の概要

今年度は原子間力顕微鏡(AFM)を改造して、近接場光顕微鏡(SNOM)の立ち上げを行った。He-Neレーザを偏光子を通して対物レンズでカンチレバー先端に絞り込む。近接場光と試料表面の相互作用による反射光を、レンズと検光子を通して光電子増倍管で計測するシステムを構築した。カンチレバーは共振周波数Ω=約400kHzで振動しているのでロックインアンプで高調波成分だけを取り出せるようにした。SNOMによってシリコンや金の試料表面を数十nmの精度で可視化することに成功した。より一層のノイズ除去を追求してゆく必要はあるものの、当初想定していた性能に近いものが得られている。一方、近接場光による超音波励起の前段階として、プリズムでのパルスレーザの全反射で発生させたエバネッセント光による超音波励起を試みた。我々は以前、直角プリズムと金属平板を接触させて実験系を構成したが、それだと面接触であるため、面精度の限界から接触不良が起こる問題があった。そこで、平板試料を金属くさびに変えてプリズムと線接触させて、先鋭な刃の部分にプリズムからのエバネッセント光を照射し、弾性波の一種であるくさび波を励起する方針とした。さらにくさびを試料として使うことで通常のバルク超音波よりも大振幅で大きな信号を得られるくさび波を検討対象にできる。また、この構成であれば、水をくさびの周囲に付着させてレーザ超音波分野で高頻度に採用される透明媒質による超音波の増強(閉じ込め効果)を調べることができる。実験結果としては、エバネッセント光によるくさび波の励起に成功し、水による閉じ込め効果によって数倍の超音波強度の増大が確認できた。あわせて高出力パルスレーザをプリズムに打ち込んだときに熱で破壊されてしまう問題に対して回避するためのノウハウを積み上げられた。これらの知見を総動員して引き続き近接場光による超音波励起に関する検討を進める。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

近接場光顕微鏡(SNOM)の立ち上げを行うことと同時に、電磁界シミュレーションを実施してパルスレーザをカンチレバーの先端に打ち込んだときの針先と試料との相互作用による電界強度の増強について調査している。基本的な実験モデルは構築し終わって、簡単な結果を得られ始めている。このシミュレーションによって、最適な試料やレーザの種類(波長)、エネルギー密度、照射角度と時間、偏光状態、針と試料間の距離等について指針を得てから実験系の構成に移行する。また、エバネッセント光による超音波(くさび波)励起の実験から、水による閉じ込め効果が近接場光学による実験系においても有効である確証が得られたため、今後の検討に反映させてゆく。このように本研究の足場を固めるデータが出揃いつつあるので、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

引き続き立ち上げたばかりの近接場光顕微鏡の性能向上に取り組む。現状ではカンチレバーは共振周波数Ωの2倍高調波成分をロックインアンプで取りだしてSNOM画像を取得しているが、5倍高調波成分まで取得すればさらに良い画像が得られることが報告されている。また、照射レーザをそのままカンチレバーに照射するのでは十分に絞り込めないので、照射前段階において光学系をより工夫してビームの拡大と絞り込みを組み合わせて照射ビームの位置分解能向上を図るとともに、偏光状態も制御対象にすることでよりノイズ除去が可能なSNOMを構築する。電磁界シミュレーションによって、パルスレーザ照射時にカンチレバーと試料間距離を変えたときの近接場における電界強度を得る。そこからエネルギー密度に換算して、温度上昇についての理論計算を行い、カンチレバーには破壊・アブレーション等の悪影響を与えずに、試料のみに熱弾性モードでの超音波を励起するための基本的な指針を得る。シミュレーションで得られた照射角度と時間、偏光状態を参考に、近接場光顕微鏡に対して実際にパルスレーザを導入して、超音波励起実験を行う。励起した超音波は可能な限りSNOM機能によって波形取得を試みるが、初期的には従来の超音波トランスデューサによって簡便に信号を得ることも検討する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Experimental Study on Liquid-Level Measurement Based on Laser Ultrasonic Technique and Tip-Generated Wedge Wave2018

    • 著者名/発表者名
      Iwao Matsuya, Yudai Honma, and Ikuo Ihara
    • 雑誌名

      Proceedings of Meetings on Acoustics

      巻: 32 ページ: 030012

    • DOI

      10.1121/2.0000714

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Measuring Liquid-Level Utilizing Wedge Wave2017

    • 著者名/発表者名
      Iwao Matsuya, Yudai Honma, Masayuki Mori and Ikuo Ihara
    • 雑誌名

      Sensors

      巻: 18 ページ: 2

    • DOI

      10.3390/s18010002

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] エバネッセント光によるくさび波の励起に関する検討2018

    • 著者名/発表者名
      小黒弥悠、松谷 巌、井原郁夫
    • 学会等名
      超音波による非破壊評価シンポジウム
  • [学会発表] Polarization properties of fifth harmonic signal in a-SNOM2018

    • 著者名/発表者名
      Yuji Baba, Iwao Matsuya, Masami Nishikawa, Takayuki Ishibashi
    • 学会等名
      Magnetics and Optics Research International Symposium 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Detecting Ultrasound Using Scanning Near-Field Optical Microscope2017

    • 著者名/発表者名
      Iwao Matsuya, Hiroki Yamada, Yuji Baba, Takayuki Ishibashi, and Ikuo Ihara
    • 学会等名
      6th JSME/ASME International Conference on Material and Processing
    • 国際学会
  • [学会発表] くさび波による液面レベル計測2017

    • 著者名/発表者名
      松谷 巌、吉村天平、井原郁夫
    • 学会等名
      日本機械学会 2017年度年次大会
  • [学会発表] ウェッジ波の励起と伝播に関する数値シミュレーション2017

    • 著者名/発表者名
      森 雅之、井原郁夫、松谷 巌
    • 学会等名
      日本機械学会 2017年度年次大会
  • [学会発表] アパーチャーレス走査型近接場光学顕微鏡における第5高調波の偏光特性の評価2017

    • 著者名/発表者名
      馬場勇至、 西川雅美、 石橋隆幸
    • 学会等名
      第78回応用物理学秋季学術講演会
  • [学会発表] Study on Liquid-level Sensing Utilizing Wedge Wave2017

    • 著者名/発表者名
      Iwao Matsuya, Yudai Honma, and Ikuo Ihara
    • 学会等名
      The 6th International GIGAKU Conference in Nagaoka
    • 国際学会
  • [学会発表] Numerical Simulation Study on Wedge Elastic Waves Propagating along Sharp Edge2017

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Mori, Ikuo Ihara, Iwao Matsuya, and Masanori Abe
    • 学会等名
      Symposium on Ultrasonic Electronics
    • 国際学会
  • [学会発表] Measuring Liquid-Level Utilizing Wedge Wave2017

    • 著者名/発表者名
      Iwao Matsuya, Yudai Honma, and Ikuo Ihara
    • 学会等名
      International Congress on Ultrasonics
    • 国際学会
  • [備考] 井原郁夫研究室

    • URL

      http://mcweb.nagaokaut.ac.jp/~ihara/

  • [備考] 長岡技術科学大学研究者総覧

    • URL

      http://souran.nagaokaut.ac.jp/view?l=ja&u=100000161

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公開日: 2018-12-17  

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