レーザの故障による期間延長を申請し、新しいパルスレーザを使用して、改造した原子間力顕微鏡(AFM)をベースとした近接場光顕微鏡(SNOM)による超音波の発生に関する検討を行った。He-Neレーザを、偏光子を通して対物レンズでカンチレバー先端に絞り込む。近接場光と試料表面の相互作用による反射光を、レンズと検光子を通して光電子増倍管で計測するシステムを構築した。カンチレバーは共振周波数Ω=約400kHzで振動しているのでロックインアンプで高調波成分だけを取り出せるようにした。SNOMによってシリコンや金の試料表面を数十nmの精度で可視化することに成功した。また、近接場光による超音波励起の前段階として、プリズムでのパルスレーザの全反射で発生させたエバネッセント光による超音波励起を試みた。半球レンズに対してパルスレーザを打ち込み、全反射させてエバネッセント光を励起する。その浸透深さは100数十nmである。このため、ボールレンズ上面に水を配置したとき、非常に浅い領域に対して局所的な加熱と蒸発および泡を発生させることができる。光線追跡によって複合光学系において焦点位置を確定し、パルスレーザのエネルギ80mW程度であれば、泡を発生させるときにボールレンズを破損させない条件を決定した。さらに、くさびによるプリズムとの点接触状態を構築しその周囲に水を付着させることによって、閉じ込め効果の発現を試みた。その結果、水を付着させて刑を閉じた系にすることによって、水なしの開放系と比較して8倍以上の強度の超音波が励起できた。これらの知見を総動員して引き続き近接場光による超音波励起に関する検討を進める。
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