研究課題/領域番号 |
17K18824
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20534259)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | ポーラス材 / 強誘電体 / マルチフィジックス特性 / Phase-Field法 / 第一原理解析 |
研究実績の概要 |
エネルギー科学技術の基幹材料となっているが、これは本材料が内部に直線状の強誘電分極を内包することに起因する。一方、ナノ多孔質材中には、従来の直線状とは異なる位相幾何学的(トポロジカル)な強誘電分極秩序が発現しうることを見出した。ナノ多孔質構造のトポロジカル強誘電分極により、均質材とは異なる圧電効果やヒステリシス応答が現れ、これによって様々な技術革新が期待できるが、その実現には特性評価や発現機構の解明が不可欠である。本研究では、ナノ多孔質材内の微視形状によって発現するトポロジカル強誘電分極とその発現機構を解明することを目的とする。さらに、外部負荷による分極の応答特性(マルチフィジックス特性)を評価する。
初年度である平成29年度は、まず、(1)ナノ多孔質(ポーラス)材はナノスケールかつ周期的な幾何的内部形状を有することが特徴であり、その複雑な多孔質構造を解析するための並列計算装置を構築し、(2)この解析装置により、異なる内部形状を有する様々なナノ多孔質材の分極秩序発現の有無とその特性を評価した。複数の幾何学的特徴を有する内部ポーラス形状に対して解析を実施し、トポロジカルな分極秩序の発現の有無を検討した。(3)ポーラス構造の分枝部分が偶数の場合には比較的滑らかなドメイン構造が形成されるのに対し、奇数の場合には渦状などのトポロジカルな分極秩序が一部に現れることを明らかにした。(4)これらの特有の分極秩序の発現メカニズムを解明するため、反電場を解析する手法を構築し、次年度に向けてプログラムの改造を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、(1)ナノ多孔質(ポーラス)材を解析するための並列計算装置を構築、(2)異なる内部形状を有する様々なナノ多孔質材の分極秩序発現の有無とその特性を評価、(3)内部に発現するトポロジカルな分極秩序の解明、(4)発現メカニズムを解明のための反電場解析プログラムの構築、である。研究実績欄に記載のとおり、これrなお予定項目(1)~(4)はすべて実施し、それぞれの目的を達成している。したがって、研究は当初予定どおり、順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、今後の研究の推進方策も、当初予定どおり実施する予定である。 (1)内部形状の異なるナノ多孔質材に対して負荷条件下での大規模解析を実施し、負荷 に対する多孔質構造特有の変形特性とマルチフィジックス特性を評価する。(2)多孔質材内部の反電場を評価し、ナノ多孔質構造によるトポロジカル分極発現のメカニズムについて検討する。(3)秩序変数に強誘電分極を選定し、Landau理論に基づく自由エネルギーの定式化とその評価をPhase-Field法を構築する。(4)上記の自由エネルギーモデルを、計算装置に組込み・調整を行うことで、ナノ多孔質材の力学解析を可能にする。(5)研究成果をまとめ、本研究の将来展望・発展性について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計算データ圧縮プログラムにより、当初の予定より計算データの保存容量が少なく、これを保存するデータ機器が小規模になったため。一方、次年度の計算データは昨年度よりも大規模になる見通しであり、次年度実装する計算機器のデータ保存システムに充てる予定である。
|