強誘電(圧電)材料は、力場・電場と緊密に作用する性質(圧電応答やヒステリシス応答)を有することからナノ・生体・エネルギー科学技術の基幹材料となっているが、これは本材料が内部に直線状の強誘電分極を内包することに起因する。一方、ナノ多孔質材中には、従来の直線状とは異なる位相幾何学的(トポロジカル)な強誘電分極秩序が発現しうることを見出した。ナノ多孔質構造のトポロジカル強誘電分極により、均質材とは異なる圧電効果やヒステリシス応答が現れ、これによって様々な技術革新が期待できるが、その実現には特性評価や発現機構の解明が不可欠である。本研究では、ナノ多孔質材内の微視形状によって発現するトポロジカル強誘電分極とその発現機構を解明することを目的とする。さらに、外部負荷による分極の応答特性(マルチフィジックス特性)を評価する。 ナノ多孔質(ポーラス)材の特有の分極秩序の発現メカニズムを解明するため、反電場を解析する手法を構築し、プログラムの改造を行った。この解析手法を用い、ナノ多孔質材中の複雑な反電場分布を解析した。その結果、表面分極電荷によって生じる反電場により、分極秩序の形成がもたらされ、機能の発現につながることが明らかになった。さらに、ナノ多孔質材に負荷を行い、負荷に対する分極秩序ならびに機能の応答特性を評価した。これらの結果を基に、自由エネルギーを基に力学モデルの構築を行い、ナノ多孔質材のPhase-field力学解析を可能にした。
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