研究課題/領域番号 |
17K18826
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
奥村 大 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70362283)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 固体力学 / 材料力学 / 分岐座屈 / パターン変態 |
研究実績の概要 |
本研究では,軟質基板上の硬質膜に生じる凸凹パターン変態の探索的分岐不安定解析を実施するための指導原理構築と効率的な解析手順考案,現象の機構解明を進めており,本年度の研究業績は以下のようにまとめられる.はじめに,解析では多様な非線形性を考慮する必要があるため,非線形有限要素解析のために有限要素解析ソフトウェアAbaqusの利用を考えた.したがって,座屈固有値解析に用いることのできる負荷パラメータは制約を受ける.例えば,ゲル材料の材料モデルをユーザー材料サブルーチンを用いて実装する場合に,膨潤の進展を負荷パラメータとすることはできない.また,材料の除去を材料定数の変更によってモデル化する場合にも同様である.このような制約を回避するため,研究代表者は,疑似的な負荷パラメータを仮定し,この仮定を検証するために基準状態を変化させながら解析する方法を提案している.膨潤の進展を面内二軸圧縮に置き換えてのパターン変態の基礎解析についてはすでに和文論文で発表しているが,本年度は,ドライエッチング過程で生じるうねり座屈に対してもこのアプローチを適用し,その影響を明らかにすることによって,論文を発表した.この論文はInternational Journal of Mechanical Sciences に採択され,印刷中の状況にある.また,ゲル膜を用いた凸凹パターン変態の探索的分岐座屈解析にも着手しており,講演会において成果を発表している.凸凹パターン変態の波長やパターンは解析領域に生じる座屈モードから特定され,単純な正弦波モードが対称性に基づいて重畳することによって,チッカーボードパターンや六方ディンプルパターンが形成されることを確かめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績の概要に記載したように,研究課題はおおむね順調に進んでいる.とりわけ,探索的分岐不安定解析を実施するための疑似負荷パラメータを用いた座屈固有値解析の手法については,円孔ゲル膜の膨潤誘起パターン変態解析だけでなくドライエッチング過程で生じるエッチング誘起うねり座屈の解析にも適用に成功しており,英語論文に手法を示し有用も示している.一方,凸凹パターン変態の解析については,基礎的事項の確認は終えているが,結果として,優先モードを特定するためには解析精度を確保する必要があり,軟質基板の取り扱いを検討する必要がある.また,解析領域を大きく取ることによって,多様なパターンへの段階的な変態を再現できる.したがって,元々の解析対象は非常に単純な構造をしているのにも関わらず,その後のパターンの発展に伴って,解析対象は3次元の非常に大規模な問題になることが分かった.この問題を解決するためには,計算機の大規模化と有効利用が必要であり,問題をコンパクトにするための知見獲得が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に述べたように,探索的分岐不安定解析のための手法については,英語論文での成果発表も完了しており,順調である.解析手法の構築については,準備は整っている.しかしながら,凸凹パータン変態の解析には,先に述べたように,軟質基板のモデル化と解析領域の選択において,自由度を失わずに計算コストを抑えるための工夫が必要である.また,分岐不安定の多重性に起因してパターンは多様化するため,収束計算を用いた静解析に基づく現在のアプローチには限界があるかもしれない.このため,パターンの発展を追跡するような座屈後解析には陽解析を使用するなども有力であると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
解析に用いるソフトウェアAbaqusの追加ライセンス購入について,今年度は購入を見合わせたため次年度使用額として繰り越した.次年度のライセンス購入に充てる計画である.
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