研究課題/領域番号 |
17K18827
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾方 成信 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20273584)
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研究分担者 |
石井 明男 (シャードンバオ) 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80773340)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 疲労 / 転位 / 計算力学 / 離散転位動力学法 / 原子モデル |
研究実績の概要 |
18世紀の産業革命以来、長年にわたって構築されてきた材料疲労の学問体系に、新たにサイズの概念を導入することで、疲労の学問体系に不連続な発展をもたらすことが本研究の主たる目的である。具体的には、最先端の計算材料力学および計算材料科学的手法を用いて疲労シミュレーションを実施し、疲労現象のサイズ依存性を実験に先駆けて予測する。平成29年度はナノサイズの結晶粒を有するナノ組織材料での疲労現象の数値解析を実現するために、繰り返し負荷下のナノ結晶領域内での転位組織の発展を解析することのできる離散転位動力学計算法を新たに開発した。本手法では、転位間の長距離相互作用については従来の離散転位動力学法同様弾性論によって解析するが、短距離相互作用や転位反応については原子モデルを用いて導出したより精密な相互作用を用いているのが最大の特徴である。また、原子モデルを用いて転位間の相互作用を導出するために、新たに転位芯の位置を拘束することのできる拘束分子動力学法を開発した。本拘束分子動力学法では有限温度における転位間の相互作用を求めることができるため、本手法を用いることにより、これまで無視されていた温度の効果を陽に取り入れた解析を実施することが可能となった。開発した離散転位動力学法を用いて、ナノ材料モデルに繰り返し負荷を作用させた解析を実施した結果、繰り返し負荷によって、転位組織が形成されるプロセスが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初原子モデルを用いた疲労解析を実施してSN曲線を得るところまでを予定していたが、原子モデルでは加速計算を用いても計算時間が予想よりも長くかかることがわかったため、新たに離散転位動力学法を開発することになった。この新規手法開発に時間がかかったため、予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
疲労の学問をナノにまで発展させるために、ナノ結晶(ナノサイズ結晶粒を有するナノ組織材料)、金属ガラス(アモルファス構造を有するナノ構造材料)、ナノピラー・ナノ粒子(外形状そのもののサイズがナノメートル)のナノ材料に対して負荷応力振幅を様々に変化させた計算機疲労試験を実施し、破壊までの負荷サイクル数と負荷応力振幅との関係である疲労SN曲線を得る。また材料の特徴長さを変化させて疲労SN曲線のサイズ依存性を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
疲労解析に使用する計算機を購入する予定であったが、本年度は途中で解析手法の構築の必要性が生じたため、手法構築を主として行った。このため、当初予定していた計算機を導入する必要性がなくなった。来年度以降は当該解析を実施するため、次年度使用額分については計算機を導入するために使用する。翌年度分として請求した助成金については、計算が進行して当該計算機を増設する必要が生じることが予想されるため、計算機増設費として使用する。
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