研究課題/領域番号 |
17K18829
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡田 晃 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60263612)
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研究分担者 |
山口 篤 兵庫県立工業技術センター, その他部局等, 主任研究員 (90470244)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 放電加工 / 曲がり穴 / つり下げ電極 |
研究実績の概要 |
これまでにつり下げ電極のつり下げ部分に薄い銅箔を用いることで曲がり穴に沿って変形する柔軟性とある程度の加工速度を得るための電流を流すための十分な断面積を確保できること,ならびに電極球径および質量が穴放電加工特性に及ぼす影響を明らかにしてきた. 本年度においては,加工穴内部での加工粉滞留による加工状態の不安定化や加工継続が不可能となることに対する対策として,まず,加工液の強制的な流れや工作物物微振動による加工液の攪拌や加工粉の排出の効果について実験的検討を行った.その結果,加工液の強制的な流れの付与は,電極球の挙動をかえって不安定とし,放電状態や放電加工特性の悪化を招くことが分かった.一方で,工作物に最大数100ミクロンの振動の振動を付与することによって,電極球と加工穴内面の長時間の接触や加工粉を介した短絡に対し,適切な極間距離を発生させることで放電状態を安定化できること,またそれによって,加工速度が向上することが分かった.また振動振幅を変化させた場合,加工速度および加工穴径が若干大きくなることが明らかとなった. 次に曲がり穴加工形状の制御性を検討するために,加工中に工作物を傾斜させることで,加工方向を任意の方向に変更することが可能かを検討した.その結果,工作物の傾斜に応じた角度で加工穴方向を正確に制御できることが明らかとなった.また,その誤差は単純な形状であればサブ㎜オーダーで実用上必要とされる形状精度を十分満たすことも確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに順調に研究を遂行進展できているため.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で,適切な構造のつり下げ電極を準備し,加工中に工作物に振動を付与しながら加工を進めることで,安定した加工状態での穴加工があること,工作物の傾斜に応じて加工方向を任意に変化させることができ,その形状精度も良好であることを確認した.しかしながら,深穴では加工が進行しなくなったり,加工形状が設計形状と大きく異なる場合もまれに生じた.そこで,平成31年度においては,実用技術としての可能性を高めるため,主に次の2項目を検討する. 加工再開の検討:深穴加工では加工粉の排出がより困難となるために,加工深さに限界がある.加工途中で加工穴に滞留する加工粉を除去し,安定して加工が再開出来れば,十分に深い穴を加工できると考えれれる.そこで,工作物振動を付与することで適切な間隙を設けることが出来る事から,それによる安定した加工再開について検討する. 実用曲がり穴形状加工:これまでの成果を生かして,深穴での曲がり穴や曲率半径の小さい曲がり穴加工を試みる.特に実用的に必要とされる様々な曲がり穴形状を試み,本曲がり穴加工法の実用性を示す.併せて,加工機上での加工形状計測についても検討を加える.
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次年度使用額が生じた理由 |
工作物への振動付与しながらの放電穴加工実験において,不適切な工作物振動条件や電気条件の場合には加工粉滞留による放電集中や加工の不安定化が頻発してつり下げ電極が異常摩耗や破損するため,多くのつり下げ電極を作成することが必要だと予測していた.しかしながら,実際にはかなり広い振動条件,電気条件において工作物振動による加工状態の安定化効果が得られたため,電極の消耗や破損は少なく,予定していた電極材料(銅タングステン合金や銅箔等)の購入を少なくできたため. 来年度はより困難な加工実験が多く電極材料や工作物材料購入が必要なため,それに充てる.また,十分な成果発信のために学会発表や論文執筆の費用に充てることを予定している.
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