研究課題/領域番号 |
17K18830
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
津守 不二夫 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10343237)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | 3Dプリンタ / 4Dプリンタ / 5Dプリンタ / 磁性粒子 / ソフトロボティクス |
研究実績の概要 |
本研究は5次元プリンタを開発し,応用していくことを目的としている.5次元プリンタとはこれまでの3次元プリンタ(x,y,z)に加え「それぞれの箇所における材料物性の配向(3次元ではθ,φの2方向で表される)」を制御したプリンタである.このように5つの設計パラメータで制御され,従来の3次元に,この2つの「拡張された次元(Nature誌の言うところのextended dimensions)」を加え,5次元プリンタと呼ぶことができる.磁場を利用した5Dプロセスは世界では申請者を含め3研究グループが昨年たまたま同時に提案・発表しており,引き続き先端的研究を遂行している. 本年度は上記5次元プリンタを開発するにあたり,UVレーザおよびガルバノスキャナを組み込んだ装置を新たに組み上げた.また,ディスペンサタイプの新しい5Dプリンタのベース部分を設計し,作製を開始した.アプリケーションとしては磁性粒子分散型のアクチュエータの出力試験を行った.構造例としては,磁場駆動型ピンセットおよび,船体模倣構造として人工繊毛構造を作製した. 今後,さらに精細かつ複雑な構造および動きを実現する必要がある.そのため,造形の最小単位となるライン構造を多様な造形パラメータで作製し,解像度および自由度を高めるための基礎情報を収集している.また,造形に利用する樹脂材料も新たに選定し,最適な造形条件を取得しているところである.柔軟性の高い構造を作製し,駆動範囲の増大を狙っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,紫外線レーザ光源を組み込んだ新たな造形装置が完成している.UVレーザ光源はガルバノミラー駆動システムが設置されており,また,出力も0.5 W以上が可能であり,高速な描画が実現している.このシステムに加え,造形ステージおよび磁場印加部を加えたシステムを実験に利用している.この,UVレーザおよびガルバノスキャナを組み込んだ装置に加え,ディスペンサタイプの新しい5Dプリンタのベース部分を設計し,作製を開始した.当初はインクジェット式の5Dプリンタの開発を計画していたが,ディスペンサタイプを採用することで,より効果的(早い開発,場の制御の容易性)な開発が実現できている. アプリケーションとしては磁性粒子分散型のアクチュエータの出力試験を行った.構造例としては,磁場駆動型ピンセットおよび,船体模倣構造として人工繊毛構造を作製した.今後,さらに精細かつ複雑な構造および動きを実現する必要がある.そのため,造形の最小単位となるライン構造を多様な造形パラメータで作製し,解像度および自由度を高めるための基礎情報を収集しており,順調に開発が進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
UVレーザシステムを利用したプリンタではさらに解像度・自由度を高める方向で検討している.同時に,積層造形を安定して実行するためのパラメータを抽出中である.新たに開発したディスペンサタイプについては3軸ステージとディスペンサ部の開発が完了している.今後,ディスペンサに利用するシリンジ先端部への磁場印加システムを完成させる.現在,リング状の永久磁石をシリンジ針に設置し,吐出された樹脂内に磁性粒子鎖構造を配置することは確認できている.ただし,この構造は樹脂が硬化するまでの間にどのような変形をするかといった対処が必要である.また,造形時の磁場印加制御を簡便化するためにコイルを自作し,3軸の磁場を造形中に付与できるように開発を進めている. アプリケーションとしては引き続き磁場駆動型のアクチュエータの開発・デモンストレーションを進める.特に別プロジェクトで開発した人工繊毛構造は,本研究で開発した5Dプリンタにより容易に出力できるため,理論的な性能が発揮できるかを開発した造形体を用い確認する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画ではインクジェットタイプの3Dプリンタの開発も並行して進める予定であった.この計画を変更し,ディスペンサタイプのプリンタをパーツを組みながら開発している.本年度,ベース部分が完成したが,最終的な磁場制御部分や制御システムについてのパーツは初年度は必要なかったため,次年度に購入することとした.
|