研究課題/領域番号 |
17K18832
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (80274538)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 心筋組織 / iPS細胞 / バイオメカニクス / 細胞シート / 組織工学 |
研究実績の概要 |
本研究課題の初年度の研究は、iPS細胞由来心筋細胞(以下iPSC-CM)に関する基礎的研究として、(A)iPSC-CMおよび間葉系幹細胞(以下MSC)との共培養系によるスフェロイド形成と拍動挙動に関する研究、(B)iPSC-CMおよびiPSC-CMとMSC共培養系の細胞シート作製方法の確立、(C)細動シートとのハイブリッド構造体作製に使用する繊維分散型ポリマーシートの開発の3種類に大きく分類される。 (A)の研究としては、iPSC-CMとiPSC-CM+MSCの2種類の培養条件でスフェロイドを形成し、スフェロイドのサイズ変化を計測した。また、画像解析の手法を用いて拍動の時間変動として変位の計測を行った。その結果、共培養系の方がより大きなサイズのスフェロイドを形成し、強い拍動挙動を示のすことが明らかになった。 (B)の研究として、細胞の播種密度と細胞シートの形成状態の調査を行った結果、細胞シート形成のための適切な播種密度を見出すことができた。iPSC-CMのみと共培養系の両方に対して、細胞シートの作製に成功し、さらに細胞シートが拍動することを確認した。また、拍動するiPSC-CMシートの動画を画像相関法を用いて解析することで、変位分布の時間変動という形で拍動挙動を定量化することに成功した。 (C)の研究としては、エレクトロスピニング法とメルトスピニング法の両手法を用いて、生体適合性ポリマーである乳酸とカプロラクトンの共重合体PLCLを原料とした繊維分散型シートの作製法を確立した。MSCやiPSC-CMを播種し一定期間培養することで、細胞親和性を有することも確認した。さらに、メルトスピニング法については、積層化することで、より高強度のシート材料を作製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、本研究課題における重要な到達点のひとつであるiPS細胞由来心筋細胞の単独培養系およびIPSC-CMと間葉系幹細胞の共培養系の両方で、細胞シートの作製に成功した。MSCのみの場合は、細胞自体の性質として容易に増殖するので細胞シートの作製は比較的容易であるが、iPSC-CMはほとんど増殖しないので細胞シートの作製は困難である。しかし、最適な細胞播種密度を見出すことで、細胞シートの作製が可能となった。一旦、細胞シートの作製が確立されると、本研究課題の最大の目標である3次元のポンプ構造の作製へ取り組むことが可能となる。さらに、容易に増殖し、iPSC-CMより安価に入手可能なMSCとの共培養系でも細胞シート作製に成功していることは、ポンプ構造の開発において重要な指針を与えることが予想される。また、本年度確立した画像相関法を用いた拍動挙動の定量的評価法は、3次元ポンプ構造体の拍動挙動解析にも応用が可能であるため、最終年度の研究計画を順調に進める上で重要となる研究成果となった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、本研究課題の最大の目標である3次元バイオポンプの開発を集中的に行う予定である。まずは、構造体の足場材料として生体適合性ポリマーのを小型球形構造体を作製し、その表面にiPSC-CM細胞シート、あるいはiPSC-CMとMSCの共培養系細胞シートを貼り付けて拍動するポンプ構造の試作を試みる。作製したポンプの拍動挙動の定量的評価、活動電位の計測、カルシウムイオン変化の計測等、心筋細胞の評価において重要な生化学的および生体力学的計測を行う。また、内部に流体(培地)を入れて流体を循環させる実験システムを構築し、ポンプの拍動が流動に及ぼす影響を定量的に評価することを試みる。次いで、ポンプサイズの拡大、および繊維分散型シート足場材料等他の足場材料を用いたポンプ構造体の開発等について検討する。 一方、ポンプの拍動挙動のシミュレーション研究として、動的有限要素法コードであるLS-DYNAを用いた数数値解析について検討する。実験系と同じ3次元構造の有限要素モデルを作成し、心筋細胞シートを心筋の数理モデルを用いてモデル化し、ポンプの拍動挙動を再現することを試みる。次に、内部に流体の存在を仮定したモデルへと発展させ、拍動による流動を再現する解析モデルを構築する。これらのモデルを用いて、実験から得られた拍動挙動と流動挙動を再現することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、iPS細胞由来心筋細胞の購入に多額の資金を必要とするが、最終年度はバイオポンプの作製に多くの細胞を必要とするため、初年度の予算を余らせて最終年度の細胞購入に使用することとした。
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