研究実績の概要 |
本年度の実施状況は以下の通り. 1.前年度にカーン・ヒリアード型の方程式を流体極限としてもつ簡便な運動論方程式を見出したが,本年度はこの運動論方程式の直接解析を主に行った.また,関係する成果をまとめた論文2本が学術誌に掲載されている.(Takata & Noguchi, J. Stat. Phys. 172, 880 (2018); Takata et al., Phys. Rev. E 98, 052123 (2018).) 2. 1.の簡易モデルは意図的に行った「過度の」簡単化を含んでいるが,カーン・ヒリアード型の流体極限をえるという実りある副産物をもたらした.本年度はこの「過度の」簡単化を手続きを緩めて,より現実的な簡易モデルの構成のあり方を検討した.この検討は引き続き行う. 3. 多孔質内の拡散現象に関しては,確率解法に基づく3次元コードの開発を基本的には終了させた.気体分子間の衝突がないKnudsen拡散に関して大規模なデータ収集を行った.このデータにパーコレーション理論の見地からの再解釈を与え,充填率が高い領域まで負荷圧力に対する流量コンダクタンスを単純な灰色模型で再現するための(気体分子と固相間の衝突に関わる)Knudsen数の換算公式を同定した. 4. Cercignani-Lampisの境界条件モデルの背後にある力学的描像を抽出するために, 同モデルにおいて固体との相互作用の影響領域下で気体分子が運動する際の軌道(確率過程)を再現する Langevin 描像を同定した.これにより,目的とした力学描像の抽出に成功した. なお,上記 1. については国内外で,3., 4. については国内の学会でも成果報告を行っている(招待講演を含む).
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