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2017 年度 実施状況報告書

ゆらぎの確率過程を用いたマイクロ流体デバイス内の現象予測と信頼性評価技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K18841
研究機関京都大学

研究代表者

巽 和也  京都大学, 工学研究科, 准教授 (90372854)

研究分担者 江利口 浩二  京都大学, 工学研究科, 教授 (70419448)
研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワードマイクロ流路 / 信頼性と性能の評価と予測 / ゆらぎ / 確率微分方程式 / 粒子と細胞の運動制御
研究実績の概要

本研究は,現象や性能で見られる“ゆらぎ”の確率過程を確率微分方程式で解くことにより求まる時間予測と高度信頼性評価の手法を開発し,これをマイクロ流体デバイス(Microfluidics)を用いた高速細胞分取装置に適用することで,細胞運動予測と分取機能の信頼性評価を行うことを目的とする.平成29年度は高速細胞分取用マイクロ流体デバイスの製作と信頼性評価を行うためのマイクロ粒子と細胞の位置,速度,間隔,同期の制御および分取特性の計測とデータ整理を行った. 粒子と細胞の位置決めと運動は梯子型電極により誘電泳動力を形成し,空間と時間で周期的に粒子と細胞に力を付加する申請者等の開発技術を用いて制御を行った.粒子の位置,速度,同期の情報は梯子型電極入口(上流)と出口(下流)にて収集し,制御目標値に対するばらつきの分布を求めた.これらに上記の確率微分方程式を解いたモデルおよび簡易モデルとしてPolynomial Chaos Expansion法を適用して諸特性の正確な分布を模擬するだけでなく,上流の初期値(入力)から下流の分布(出力)を高度に予測できる手法の開発への応用展開を図った.
確率微分方程式やPCE法では,モデルの一部に物理現象を定式化して導入する必要がある.すなわち梯子型電極によって粒子と細胞の位置,速度,間隔,同期が制御できる原理を数学的に証明する必要がある.本年度では,この制御機構に関して摂動論を用いて説明することが出来た.この数理モデルから予測した粒子運動特性と実験で計測したものを比較すると両者は良好な一致を示した.この決定論的運動特性を運動予測と信頼性評価のモデルに導入する予定である.
これらの成果は3件の学会にて発表を行い,平成30年度の国際会議での発表と学術論文に投稿する予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画で示した本年度の予定の1つである確率過程の解析を導入した高度運動予測・信頼性評価モデルの開発については“ゆらぎ”の確率微分方程式とPolynomial Chaos Expansion法を用いた基礎構造とプログラミングは完了し,具体的に決定論に基づく支配方程式に適用できる状態である.さらに研究分担者も計画の1つである固体表面の欠陥形成過程とプロファイルの確率統計解析と信頼性評価について,単結晶シリコン基板中の欠陥面密度を光変調反射率分光法の適用により算出し,平行して反転層電気容量解析手法によりガス種に依存した欠陥密度プロファイルを同定し,統計的効果の解明に必要なデータ取得を行った.これに欠陥構造の電子状態を第一原理計算に上記の確率解析手法を適用した欠陥生成過程予測プログラムを適用して欠陥プロファイルの予測精度を検証している.研究実績の概要で述べたとおりマイクロ流路の実験もデータを取得するところまで進んでいる.
一方,研究計画に示した確率過程のモデル定数のための3次元数値シミュレーションは十分なデータが収集できていない.このため粒子のように“ゆらぎ”をもたらす要因が少ない場合は実験データへのモデルの適用が可能であるが,細胞を対象とした場合には決定論および確率微分方程式に適用すべきパラメータが揃っていない.さらにマイクロデバイスでも位置,速度,同期に関するデータは粒子以外では限られた種類の細胞のみであるため,モデルを実証するためには情報を増やす必要がある.
このため現在の進捗状況は「おおむね順調に進展している」である.

今後の研究の推進方策

マイクロデバイスにおける粒子と細胞の運動制御に関しては機器の性能と信頼性を表す粒子と細胞の位置,速度,同期のデータを収集し,その分布に対して確率微分方程式とPCE法を用いたモデルの適用を開始している.平成30年度では,各モデルにおける決定論として支配方程式とモデル定数を定め信頼性評価に関する精度と特性を検討する.つぎにマイクロデバイスでの試料流入部(入力)と出口(出力)間での決定論と確率論に係る要素を抽出し,これらをモデルに適用することで入口の状態に基づく出口での粒子と細胞の特性(出力)の予測を図る.この場合,例えば梯子型電極の各要素に意図的に不具合を生じさせて測定を行うことで事象を強調し,モデルの妥当性と各種要素の影響の検証を行う予定である.
一方,進捗状況で述べたとおり,細胞の形状と力学特性に基づく流体内の運動に関する決定論と確率論に基づく“ゆらぎ”を求めるために3次元数値解析を行う必要がある.既に数値解析プログラムは完成させているが,モデル定数を導出するための計算データ数が不足しているため,各種条件について計算を行う.

次年度使用額が生じた理由

研究実績の概要と進捗状況の理由で述べたとおり,実験と数理モデルは順調にデータ収集とモデル開発は共同研究者と共に進めているが,3次元数値解析では細胞の力学モデルの構築と計算の実行が予定よりも遅れている.このため研究計画に示した設備備品である高性能計算ワークステーションの選定と購入が遅れている.計算および計算機の購入は平成30年度の前半に行う予定である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [学会発表] マイクロ流路強制対流輸送:粘弾性流体流れによる混合・伝熱促進2018

    • 著者名/発表者名
      巽和也
    • 学会等名
      日本冷凍空調学会 さろんセミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 梯子型電極を用いた誘電泳動力によるマイクロ流路流れでの粒子の速度・間隔・同期制御2018

    • 著者名/発表者名
      野間淳志,巽和也,栗山怜子,中部主敬
    • 学会等名
      バイオ・マイクロシステム研究会
  • [学会発表] Microfluidic convection: convection and alignment control of particles in micro-channel flows using dielectric force2017

    • 著者名/発表者名
      K. Tatsumi
    • 学会等名
      Innovative Technologies in heat transfer, fluid mechanics and thermodynamics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 誘電泳動力によるマイクロ流路内流れにおける粒子の間隔と同期制御2017

    • 著者名/発表者名
      野間淳志,榎坂武彦,巽和也,栗山怜子,中部主敬
    • 学会等名
      日本機械学会第30回バイオエンジニアリング講演会
  • [学会発表] 梯子型電極を用いた誘電泳動力によるマイクロ流路内流れでの粒子整列機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      榎坂武彦,巽和也,野間淳志,栗山怜子,中部主敬
    • 学会等名
      日本流体力学会 年会2017
  • [学会発表] 誘電泳動力の時間空間制御によるマイクロ流路内流れでの粒子整列技術2017

    • 著者名/発表者名
      巽和也,川野光輝,榎坂武彦,栗山怜子,中部主敬
    • 学会等名
      第64回理論応用力学講演会

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公開日: 2018-12-17  

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