研究課題/領域番号 |
17K18844
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
玉川 雅章 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (80227264)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 白血球 / サイトカイン濃度勾配 / 水中推進機構 / 濃度マランゴニ効果 / 微粒子表面加工 |
研究実績の概要 |
本課題では,白血球膜機能から学ぶ濃度マランゴニ効果を利用した新規マイクロ粒子駆動源の開発を目的として,濃度勾配による水溶液中下で白血球の運動に着目し,光学顕微鏡下での白血球移動と濃度輸送の計測,および原子間力顕微鏡による駆動力の計測から,白血球表面での濃度勾配による白血球駆動機構の解明を行う.また,この生物の機能を模倣した濃度制御型微細表面加工のための基礎的研究を行う.
平成29年度については,(I-1) 溶液中白血球の過渡的サイトカイン濃度勾配による運動の観察と測定を過渡的について行った.実験では,サイトカインに付着させた蛍光物質を顕微鏡下でプログレッシブスキャンCCD カメラを用いて観察し,その輸送状態(輝度分布,輝度勾配分布)を実験的に得ることができた.今年度については,定常的濃度勾配の設定に先立ち,3種類(低濃度勾配,中濃度勾配,高濃度勾配)の初期濃度勾配を与えることにより,白血球の濃度勾配依存性がないかどうかを中心に調べた.これらの結果として,白血球の周囲流体の濃度勾配が負に対して,白血球の膜上濃度勾配は正が支配的であり,正と負が逆転を繰り返しながら時間進行していることや3種類のサイトカインの濃度勾配を変化させてもこの機構は同様であることがわかった.また,1次元の濃度マランゴニ効果の理論式から得られているように,白血球移動速度は膜上サイトカイン濃度勾配に比例していることがわかった.さらに,移動速度が初期のサイトカイン濃度勾配にも比例していることがわかった.一方,(I-2) 溶液中白血球の定常的サイトカイン濃度勾配による運動の観察と測定 については,Y字型流体回路において,対象となる白血球の観察領域へのシードがうまく行われなかったため,定常的濃度勾配時の上記の解析ができなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白血球移動については,各種初期濃度勾配によらず同じ機構で動いていることが実験より明らかになったため.また,定常やそのほかの計測については,計測にあたり技術的課題を解決すれば遂行可能となるため.
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今後の研究の推進方策 |
基本的には,研究計画どおり進行させるが,(Ⅱ) 原子間力顕微鏡による働く力の計測については,平成30年度においては,微粒子に対してこの機能を似せた機構をもたせるため,白血球(細胞)そのものよりも,接着が容易な微粒子を用いて計測を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
その主なものは,予定にあった微小流路(消耗品)やその回路でのデバイス等,さらには解析のためのソフトウエアの購入が遅れたため.
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