研究実績の概要 |
本課題では,白血球膜機能から学ぶ濃度マランゴニ効果を利用した新規マイクロ粒子駆動源の開発を目的として,濃度勾配による水溶液中下で白血球の運動に着目し,光学顕微鏡下での白血球移動と濃度輸送の計測,および原子間力顕微鏡による駆動力の計測から,白血球表面での濃度勾配による白血球駆動機構の解明を行う.また,この生物の機能を模倣した濃度制御型微細表面加工のための基礎的研究を行った.得られた結果は以下の通りである. (1)溶液中白血球の過渡的サイトカイン濃度勾配による運動の観察と測定を行った.サイトカインに付着させた蛍光物質を顕微鏡下でCCD カメラを用いて観察し,その輸送状態(輝度分布,輝度勾配分布)を実験的に得ることができた.3種類(低・中・高濃度勾配)の初期濃度勾配を与えることにより,白血球の濃度勾配依存性を調べ,(a)白血球の周囲流体の濃度勾配が負に対して,白血球の膜上濃度勾配は正が支配的であること,(b)正と負が逆転を繰り返しながら時間進行していること,(c)3種類のサイトカインの濃度勾配に対して,その勾配に対する感度が変化することがわかった. (2)白血球の一定濃度勾配による運動の観察と測定については,Y字型流体回路内で,観察領域への白血球シードを試みたが,一定濃度勾配下になる条件の前に移動を開始してしまい,白血球から見ると過渡的な濃度勾配となり,結果的に(1)(2)と同様な現象となった. (3) 原子間力顕微鏡を用いた力の計測については,白血球の表面をカンチバーで刺激することによって,細胞として反応し安定したデータを得ることができなかった. (4)新規マイクロ粒子については,凹凸等の表面加工をフェムト秒パルスレーザで行う予定であったが,50μmのPIV用の樹脂ビーズ球に対して,集光領域(5x10μm)の位置あわせが完全でなく,表面の微小凹凸生成が困難であった.
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