本研究では感圧性中空マイクロカプセルを開発する.騒音問題や高速移動体における空力問題の解決には空気中の圧力分布の把握が重要であるが,これを実現する術はまだない.酸素分圧に応答して発光特性が変化する燐光分子を殻にドープし,内部を中空として浮遊性を高めた,中空マイクロカプセルを開発できれば,粒子の移動量から流れの速度を,燐光の発光特性から空気中の酸素分圧を同時に可視化計測することが可能となる.本研究ではカプセルの殻となる高分子樹脂,感圧性の燐光分子とこれらの溶媒,分散媒の種類や粘度などの物性を変化させつつカプセルの開発を進める. マイクロバブルを核としたカプセル製法では,分散媒とガスの物性に依存するマイクロバブルのサイズによってカプセルサイズが決まるため比較的均一な粒径のカプセルを作成できる.有機溶媒が分散媒に溶出し,最終的に揮発するまでの間,バブルが長時間水中に留まる必要がある.これら物性や製法の制約から,カプセル特性が決まる.溶媒種類,溶質濃度,合成温度,粘度,活性剤などがカプセルに与える影響を調べた. 粒子径,凝集性,ドライな状態でのカプセル回収法と回収効率のバランスを考慮してカプセルを合成し,1.5~5.0μmのドライな中空カプセルを作成することができた. 圧力および温度の制御が可能な評価システムを構築することができたため,これを用いて作成したカプセルの圧力応答性を評価した.圧力感度は通常のポリマーバインダーでの塗布型PSPと同等の感度を示した.カプセルの殻の素材を生分解性樹脂やPSP用のポリマーとする場合,時間応答性の改善が難しく,バインダーレスな方法を考える必要がある.
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