研究課題/領域番号 |
17K18849
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
西山 宏昭 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (80403153)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロアクチュエータ / プラズモン共鳴 / 光熱変換 |
研究実績の概要 |
本研究では,厳密光学設計した金属ナノ構造を用いた生体透過光駆動アクチュエータの開発に取り組んでいる.今年度は,当初計画に従い,まず生体透過性に優れた波長830 nm光に対して高効率プラズモン励起が可能な金属ナノ構造の光学設計を行った.電子ビーム描画およびプラズマエッチングなどで作製し,かつ作製プロセスを最適化した同構造は,設計値に近い効率と偏光依存性のプラズモニック特性を示すことを実験的に確認した.波長830 nmの連続光を上方から照射し,その様子を同軸落斜観察した.プラズモニック構造上にPNIPAMゲルおよびゲルファイバーを液中配置し照射を行ったところ,PNIPAMゲルファイバーの顕著な体積収縮と白濁化を観測した.また,照射を止めると照射前の状態へと回復し,可逆的変化であった.同条件において,非プラズモニック構造上では変形は生じなかった.繰り返し照射によっても,ほぼ同一の可逆的変形が起こり,一方で,ゲルファイバーおよびプラズモニック構造に損傷はなかった.この変形量は,ヒータ加熱によるPNIPAMゲルファイバーのそれとほぼ同じであり,その変形量は飽和していた.これらの時間応答性を定量的に評価するとともに,プラズモン励起効率とレーザ強度分布などを考慮して導出した関係式から,投入したレーザの10%より小さな出力で,非プラズモニック構造上に比べて顕著の加熱効果を生み出し,またその効果を定量的に見積もった.現在,プラズモニック構造を形成する空間領域を制限し,その熱損失の評価を行いつつ,金属構造の高次化に取り組み,プラズモン励起効率の向上を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り,厳密設計されたプラズモニック構造による生体透過光駆動変形に成功し,変形特性と理論比較を行い,その効果の定量化にまで至っているため.
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は当初計画に近い進捗であった.今後,まず,プラズモニック構造を形成する空間領域を制限し,その熱損失の評価を行う.また,マイクロチップ化を想定し,ダウンサイズ効果を検証する.素子の光熱変換効率向上を光学設計するとともにゲルファイバーへの素子埋め込みプロセスの目途を立てる.
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