本研究では,厳密光学設計された金属ナノ構造を用いた生体透過光駆動ソフトアクチュエータの制御原理の開発に取り組んだ.近赤外光で光駆動変形を示す材料や構造は多く報告があるが,光応答性の設計性に関する強い制限やそれに由来した単純動作への限定,機能集積の困難さ,他種応答性材料とのハイブリッド化が難しいなどの課題を抱えている.本研究では,これらを克服した複雑動作が可能な近赤外駆動マイクロアクチュエータの開発を目指している. 今年度は,前年度までに得られた知見に基づいて,金属ナノ構造とソフト材料の相互作用について研究を進めた.金属構造の配列および形状の変調とともに高次構造化を進め,入射ビーム強度分布の相関を調べた.前年度までと同様に,金属構造によって入射ビームを高効率に光熱変換することは可能であったが,事前の解析と比較して,光熱変換効果が飽和するためには,より長いプラズモン波の伝搬距離が必要であることが実験的に分かった.測定されたプラズモン変換効率と変形挙動の関係を定量的に評価した.また,ソフト材料内部に金属ナノ構造を分散配置し,そのプラズモニック光熱変換効果を介した材料変形特性を調査した.配置を工夫することで小さな析出空間でも顕著な変形効果が得られ,また,変形速度や変形位置の制御も容易であることが分かった.これら光駆動変形ソフト材料のマイクロブロック化にも成功ている.これらの成果は,本研究が目指す,生体内で複雑動作が可能な光駆動マイクロアクチュエータの実現に有用な成果であった.
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