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2017 年度 実施状況報告書

Cell Pinballメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K18854
研究機関大阪大学

研究代表者

金子 真  大阪大学, 工学研究科, 教授 (70224607)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワード赤血球 / 回転運動 / 並進運動 / マイクロ・ナノデバイス / モデル化
研究実績の概要

生理食塩水中の塩分濃度を下げていったとき赤血球のどの部位が上下面に最初に接触するかについてマイクロ流路内に血液を生理食塩水で薄め,透過型顕微鏡で観察した.赤血球は中心部位の厚さが1μm程度であるのに対し外周部位が2μm程度であるため,マイクロ流路の高さを下げたときに最初に赤血球と接触するのは,中心部位ではなく外周部位になる.単純に考えると接触部はドーナツ状になっているはずである.一方,生理食塩水濃度を下げると赤血球の形状は徐々に球に近づいていくため,この状態でマイクロ流路の高さを上げていくと,接触部のドーナツ形状の半径は小さくなり,極限的に赤血球が球になったときに半径ゼロ,つまり接触面積ゼロの点接触になるはずである.実際にドーナツ状の接触形状が顕微鏡で観察できた訳ではないが,興味深い傾向として,Cell Pinball現象を起こしている赤血球は例外なく,赤血球外周が極端に黒くなっている様子が顕微鏡で観察することできた.透過型顕微鏡は,光が透過した部分は白く,光が吸収された部分は黒く見える性質を示すため,この事実はCell Pinball現象を起こしている赤血球の外周部分が厚くなっていることを示唆している.この実験により,Cell Pinball現象を起こしている赤血球では,赤血球外周部分がマイクロ流路上下面に接触している可能性が高いことがわかってきた.つまり赤血球中心部は流路上下面には接触せず,周囲だけが流路上下面に接触している可能性が高い.その結果として,Cell Pinball現象時における赤血球の運動軌跡が直線からぶれにくくなっているものと考えている.これは平成30年度の研究に向け,重要なヒントを提供してくれた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本申請では研究計画を大きく以下の二つに分けることができる.
平成29年度:生理食塩水濃度を下げ,赤血球の内圧を上昇し,赤血球の形状が球状に近づく.はじめに生理食塩水中の塩分濃度を下げていったとき赤血球のどの部位が上下面に最初に接触するかについて調べる.もし厳密な球になれば,接触点は球の頂点,つまり幾何学的中心に一致するはずである.一方,もし厚さ2μm外周部位の方が最後まで高さの優位性をキープできたとすると,接触部は外周に存在する凸形状部位の一部になるはずである.赤血球固有の形状を考えると,後者が起こる可能性が高い.この点を初年度に明らかにする.
平成30年度:Cell Pinball現象を起こした状態において接触部形状を可視化し, Cell Pinballの新しい運動モデルを構築し,その普遍性についてのエビデンスを取得する.
平成29年度研究実績概要より,Cell Pinball現象を起こしている赤血球の外周部分が厚くなっていることを実験的に明らかにし,接触部は外周に近い領域でドーナツ状に起こっている可能性が高いことを示唆した.以上が平成29年度の研究計画を予定通り遂行していると判断した根拠である.

今後の研究の推進方策

Cell Pinball現象は幅50μm,厚さ4μmのマイクロ流路を用いて生理食塩水で薄めた赤血球を流したときに観察される.しかも赤血球固有のもので赤血球以外の細胞で観察された報告例がない.したがって直径6~8μm,中央部厚さ1μm,外周部厚さ2μmという赤血球独特な形状に解決のヒントが隠されていると考えるのは自然であろう.(1)生理食塩水で塩分濃度を薄くすることによって,Cell Pinball現象が助長されること,さらに,(2)平成29年度の研究から,マイクロ流路と赤血球の接触部は外周に近い領域でドーナツ状に起こっている可能性が高いことがわかってきた.(1)については赤血球の内圧増加に伴って,赤血球の形状が球状に近くなり,結果として赤血球がマイクロ流路上下面に接触する可能性が高くなることからCell Pinball現象の発生頻度が増加するという説明で十分である.つまりCell Pinball現象の完全理解には,この点を踏まえ,平成30年度の研究では,Cell Pinball現象を起こした状態において接触部形状を詳細に可視化し,一定の接触状態が維持されつつ,直線移動が持続される点について考察していきたい.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] LED-CT Scan for pH Distribution on a Cross-Section of Cell Culture Medium2018

    • 著者名/発表者名
      Nobuya Higashino, Toshio Takayama, Hiroaki Ito, Mitsuhiro Horade, Yasutaka Yamaguchi, Chia-Hung Dylan Tsai, and Makoto Kaneko
    • 雑誌名

      Sensors

      巻: 18(1) ページ: 1-10

    • DOI

      10.3390/s18010191

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Vibation based virtual vortex gear2018

    • 著者名/発表者名
      H. Miyashiro, T. Takayama, Chia-Hung Dylan Tsai and Makoto Kaneko
    • 学会等名
      The 31st Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS2018)
    • 国際学会
  • [学会発表] Measurement of both viscous and elastic constants of a red blood cell in a microchannel2018

    • 著者名/発表者名
      A. Kirimoto, H. Ito C. D. Tsai and M. Kaneko
    • 学会等名
      The 31st Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS2018)
    • 国際学会
  • [学会発表] 3D pH Measurement For Cell Culture using CT Scan2017

    • 著者名/発表者名
      Nobuya Higashino, Toshio Takayama, Hiroaki Ito, Mitsuhiro Horade, Chia-Hung Dylan Tsai and Makoto Kaneko
    • 学会等名
      28th 2017 International Symposium on Micro-NanoMechatronics and Human Science(MHS2017)
    • 国際学会
  • [学会発表] ライトトレイル法を用いた PDMS マイクロ流路ゲイン特性の推定2017

    • 著者名/発表者名
      細川 直哉、寺村 薫、 溝上 浩司、高山 俊男、蔡 佳宏、 金子 真
    • 学会等名
      第18回 計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会
  • [学会発表] センサを用いない赤血球のヤング率推定2017

    • 著者名/発表者名
      桐本 淳司、伊藤 弘明、高山 俊男、金子 真
    • 学会等名
      第18回 計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会
  • [学会発表] PDMS マイクロ流路の硬さは伝達特性にどう影響を与えるか?2017

    • 著者名/発表者名
      寺村 薫、細川 直哉、高山 俊男、 溝上 浩司、蔡 佳宏、 金子 真
    • 学会等名
      第18回 計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会

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公開日: 2018-12-17  

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