研究課題
ヒトは,わずか数ミクロンの凹凸でも指先で触れるだけで検知でき,それらの情報を元に,対象表面の触感(つるつるやざらざらなど)を生成している。このような手を撫でる過程において,摩擦で生じた指紋の自励振動が皮膚内部にある機械受容器に伝わり,ミクロン単位の凹凸を検出していると考えられる。次に,これらの情報は,脊椎や視床を経由して大脳皮質の第一体性感覚野に到達し,前頭・側頭葉を含む高次の脳領域に伝わり,各領域間の相互作用により対象の触感を判断していると考えられる。しかし,ヒトは「どのようにしてミクロンオーダーの凹凸を指先で検知しているのか?」,「どのような情報を指先で取り込んでいるのか?」,「脳内でどのような情報処理して接触面の違いを判断できるのか?」の疑問が未だ明らかにされていない。代表者らは,上記のそれぞれの疑問に対する解答を得るために,研究を進めてきた。それで,全研究期間において,1)指紋微視的な変化の直接観察システムの開発に成功し,2)凹凸刺激に対する指紋微小振動と表面手触り感の相互関係を明らかにし,3)ヒトの第一体性感覚野における振動検出の神経基盤を検討したなどの成果が得られ,概ね計画当初の目標を達成している。また,本研究の実施により,従来が困難と言われた指紋微小振動の精密な動的特性の観察・計測が実現できたと同時に,指紋微小振動・触感の心理的評価・触感の脳内処理ネットワークの関係解析への発展も期待できる。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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