本年度はマイクロ流体チップ内部の溶液の拡散を抑え、かつ線虫のチップ内移動をより促進することで、実験の正確性、時間短縮化を目指した。マイクロ流体チップ内での溶液拡散が速すぎると、濃度勾配を利用したがん検出が困難となってしまう。しかしながら、これまで用いてきたマイクロ流体チップでは、3分程度でチップ全体に溶液が拡散してしまうため,これを抑える必要がある.そこで、増粘剤を用いた溶液拡散速度の低減を行なった。その結果、増粘剤を入れることで溶液の拡散を抑制し、マイクロ流体チップ内における尿サンプルの濃度勾配を保持できる時間を延ばすことに成功した。これにより、がん検出の正確性が増加することが期待できる。 また、昨年度までのマイクロ流体チップのデザインでは、線虫が流路内に入りにくく線虫のサンプル数を確保することが困難であった。そこで、マイクロ流体チップの流路形状を見直し、より線虫が入りやすく、移動しやすい形状へと変更した。その結果、一度の実験でマイクロ流体チップ内に導入される線虫の数を増やし、線虫の流路内での移動速度を向上させることに成功した。この結果は、がん検出のための診断回数を増やし正確性を向上させることに寄与すると考えられる。
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