従来手法では測定できなかったGHz帯域の高周波近傍磁界分布を正確に測定するための新たな計測方法を提案するとともに、実証実験により提案の正当性を示すことを目的として平成29年度は初年度の研究を実施し、以下の実績を得た。 第一に、テーブルトップタイプの実験装置を用いた基礎実験を行ない、研究実施計画に記載の通りの提案手法で高周波近傍磁界を低侵襲に計測可能であることを実験的に明らかにした。具体的には、磁気光学結晶材料を透過した光の偏光面が、材料の磁化状態によって変化することを利用して材料周辺の磁界を計測するものである。被測定磁界周辺に金属がないため場を乱さずに計測できる。特に本研究では、180度位相の異なる2点の測定を行うことを提案している。それらの差分を信号として利用することで、ファイバー曲げや周辺温度変化に伴う測定誤差を排した高感度計測ができることを明確にした。加えて、発光位相を変化させることにより、被測定磁界の波形を測定することが可能であることも明らかにした。 第二に、磁気光学結晶材料の探索を実施し、最適化を図った。GHz帯域の磁界を高感度に計測するためには、高品質な磁気光学結晶の利用が必須である。ここで言う高品質とは、光透過率が高く、ファラデー回転角が大きく、面内に磁気異方性を有し、できるだけ厚いことである。これらの条件に加えて、用いる光波長の依存性も踏まえ、最適な磁気光学結晶材料がBi置換ガーネット材料であることを見出した。この材料を使った計測により1[mOe]、6[GHz]の高周波磁界計測が可能であることが実証できた。
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