従来手法では測定できなかったGHz帯域の高周波近傍磁界分布を正確に測定するための新たな計測方法を提案するとともに、実証実験により提案の正当性を示すことを目的として2年間の研究を実施し、以下の実績を得た。 第一に、テーブルトップタイプの実験装置を用いた基礎実験を行ない、研究実施計画に記載した提案手法を用いることで高周波近傍磁界を低侵襲に計測可能であることを実験的に明らかにした。本研究では、初年度に180度位相の異なる2点の測定を行い、それらの差分を信号として利用する方法、第2年度には、パルスレーザの発光トリガ信号として位相の異なる二つの信号を用意しそれらを切り替えることによりバースト変調させる方法について検討を行い、高感度測定を実現した。 第二に、磁気光学結晶材料の探索を実施し、最適化を図った。GHz帯域の磁界を高感度に計測するためには、高品質な磁気光学結晶の利用が必須である。ここで言う高品質とは、光透過率が高く、ファラデー回転角が大きく、面内に磁気異方性を有し、できるだけ厚いことである。これらの条件に加えて、用いる光波長の依存性も踏まえ、最適な磁気光学結晶材料がBi置換ガーネット材料であることを見出した。この材料を使った計測により1[mOe]、6[GHz]の高周波磁界計測が可能であることが実証できた。 第三に、これらの基礎検討を踏まえ、実用化を視野に入れたハンディータイプの計測器のプロトタイプを試作しその性能を評価した。現在このプロトタイプを基にした市場調査を行なっており、近い将来の市販化に向けて計測器メーカーとの検討を行なっている。 以上まとめると、計画書に記した提案手法をもとに研究を遂行し、その提案が正しいことを実証するとともに高感度計測のために必要な条件を明確化できたこと、そしてそれを踏まえた測定器の実用化に目処がついたことから、当初計画以上の成果を挙げて終了した。
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