ピコ秒・フェムト秒領域の高強度短パルスを発生させることのできる受動モード同期光ファイバレーザとして最近注目されているのが、9の字(Figure-9)型レーザ(F9L)である。F9Lでは可飽和吸収素子である非線形ファイバループミラー部分にファラデー回転子を用いた非相反位相シフタを挿入し、右回りパルスと左回りパルスに逆の非相反位相シフトを与える。これにより両回り光間に位相バイアスを与えることができ、位相バイアスを適切に選べば可飽和吸収の飽和強度を下げてモード同期しきい値を低減できるのと同時に、非線形ファイバループミラーの動作を反転させることができるため、非線形ファイバループミラーとミラーにより構成するF9Lが可能となる。我々は、このF9Lの非相反位相シフタを光変調器(光位相変調器もしくは光周波数シフタ)で置き換えることを考案し、本研究で実施した。本方式は受動モード同期と能動モード同期のもつ特長を両立させることのできる受動・能動ハイブリッドモード同期光ファイバレーザであると言える。 光位相変調器を用いた構成を試作し、パルス幅210fs、スペクトル幅17.94nm(帯域時間積は0.469)、繰り返し周波数は1.54MHzのモード同期短パルスを得た。変調周波数が1.64 ± n×約0.1MHz でモード同期がかかることが観測された。分数モード同期が起こっていると考えているが、詳細な原因は現在も検討中である。光位相変調器に代えて光周波数シフタを用いた構成では、光周波数シフタの駆動周波数 38.58MHz、ポンプパワー41mW でパルス幅1.9ps、スペクトル幅 1.3nm で繰り返し周波数は 3.73MHzのモード同期短パルスを得た。この場合には分数モード同期は観測されず、安定な基本モード同期が実現できた。
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