研究実績の概要 |
・スピン太陽電池による有効電化蓄積機能付与、およびスピン三重項利用による高効率化に関する研究を実施した。 先行実験(APL, 103(2013) 232404, APL, 99 (2011) 242504、Fe2O3およびFe3O4薄膜において、p, n伝導に世界に先駆けて実証)の成果をもとに、p型層が磁性半導体からなるpn結合において光照射を行うと、スピントンネリングの整流効果によりスピン蓄積が期待され、非磁性pn結合より高効率の起電力が予測された。 さらに、従来にない新しいアプローチとして、Fe3+の持つ大きなスピン(S=5/2)の秩序制御により、磁気抵抗異方性制御(光キャリア輸送能向上)、並びに格子歪誘起結晶場による三重項状態を活用した励起キャリア長寿命化を試み、電子-正孔分離効率の向上による高効率化を図った。しかし酸化鉄および酸化物磁性半導体においては、太陽光エネルギー変換における磁場効果は殆ど観察されなかった。 発光過程で交換交差(1重項から3重項への変換)が有効に作用する有機材料や、スピンおよび双極子がカップリングしたマルチフェロ材料の検討が必要であることが明らかとなった。 ・極性結晶層による水素発生(水の直接光分解)の実現に関する研究を実施した。 α-Fe2O3単独では伝導帯側の還元電位が水分解電位より低いため、水素発生には外部電圧印加(0.5V程度)が必要である問題を解消するため、類縁鉄酸化物のウスタイトFeOとのヘテロ接合や、極性材料(例えばP63/mc)ZnOあるいは(Zn, Mg)O、(Zn, Co)Oの自発分極、ピエゾ分極の内部バイアス電圧印加効果により、外部からの電圧印加なしで水素を発生させる実験を行い、外部電圧印加なしで僅かではあるが光水分解が確認された。
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