研究課題/領域番号 |
17K18877
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
牧原 克典 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90553561)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | Si量子ドット |
研究実績の概要 |
本年度は、SiH4-LPCVDによるSi量子ドットの自己組織化形成とドット表面酸化を繰り返すことで、Si量子ドット/SiO2 6層集積構造を実現した。さらには、上部Pt電極形成後、電圧印加時におけるSi量子ドット多重集積構造内の電界分布を硬X線光電子分光(Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy : HAXPES)を用いて定量評価した。得られたSi1s内殻光電子スペクトにおいて、Si酸化膜成分(Si-O結合)およびSi基板およびSi量子ドットに起因するSi-Si結合は、電圧印加の増加に伴い半値幅が増大し、低エネルギー側へシフトするものの、Si-Si成分は非対称なスペクトル形状になることが分かった。この結果は、基板および各ドット層に不均一に電界が印加され、各ドット層からの信号が重畳した結果で解釈できる。また、得られたSi1s内殻光電子スペクトを、Si1s信号の光電子脱出深さ~11nm、各膜厚(上部Pt電極、Si量子ドットの平均高さ、層間絶縁膜)より求めた信号強度の深さ方向に対する減衰率を考慮し、半値幅を一定とした結果、印加電圧6Vでは、Si量子ドット6層およびSi基板の7成分で分離することができた。さらには、異なる印加電圧においても同様に波形分離した結果、上層ドットへの電界集中が認められることから、印加電圧の増大に伴い電界集中効果も顕在化することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、超高密度形成したSi量子ドットが多重に配置された構造の形成技術を開発した。さらには、電圧印加時における各ドット層のポテンシャル分布を定量評価しており、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、超高密度形成したSi量子ドット直上に、不純物(P)添加したSi量子ドットが多重に配置された構造の形成に取り組む。この構造において、p-Si基板から熱励起電子をPデルタドープSi量子ドットに注入することで電流を得る。ここで、下層Si量子ドットサイズを大きく(~10nm)設定し、実効エネルギーバンドギャップを減少させて、2層、3層目のドットのサイズは段階的に小さくすることで、熱励起によるポンピング効果を高める。一方、電圧は、上部電極のアモルファスSiがn+型となっており、結晶Siに比べフェルミ準位が浅くなることを利用して、基板のp-Si(100)とのフェルミ準位差(内蔵電位:~1eV)を活用する。従って、この一次元連結量子ドット構造では、高効率発電が期待できる。また、想定している電流値および電力が得られない場合は、n-Si(100)基板上に同様の構造を作成する。尚、この場合は、内蔵電位は~100 meV 程度しか見込めないが、大幅な電流レベルの増大が期待できる。尚、プロセスの各段階で、試料表面を原子間力顕微鏡および高分解能X線光電子分光(XPS:現有設備)することで、自己整合形成する様子を評価するとともに、最終構造の断面TEM観察(学内共同利用設備を活用)によりドットサイズや酸化層厚等の構造パラメータを定量する。また、XPS分析は研究協力者の大田晃生(名古屋大学:特任助教)が担当する一方、電圧は、上部電極のアモルファスSiがn+型となっており、結晶Siに比べフェルミ準位が浅くなることを利用して、基板のp-Si(100)とのフェルミ準位差(内蔵電位:~1eV)を活用する。従って、この一次元連結量子ドット構造では、高効率発電が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より採択決定時期が遅かったため、本年度は、所属研究室の既設装置で研究を推進した。次年度は、当初予定通り計画を実施し、微細加工プラットフォームを積極的に活用して加速的に研究を実施する。
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