本年度は、Si量子ドット多重連結構造からの電界電子放出において、電子放出特性および放出電子の運動エネルギーの積層数依存性を評価した。 具体的には、n-Si(100)基板をRCA洗浄後、酸素雰囲気中において基板温度800℃で2.0nmの酸化膜を形成した後、引き続き、同一チャンバ内にてSiH4-LPCVDによりSi量子ドット(面密度: 4.5×10^11cm-2、平均ドット高さ: ~3.0nm)を形成し、ドット表面を熱酸化することで~2nmのSiO2を形成した。この一連のプロセスを繰り返すことでドット積層数11、13、15層のSi量子ドット多重連結構造を形成した。最後にAu上部電極(~10nm)及びAl裏面電極を蒸着形成した。電子放出特性は、真空中において、上部電極を接地電位に固定し、基板裏面電極に負バイアス(Vs)を印加し、さらに試料表面から~10mmの距離にバイアスを印加したコレクタ電極(陽極酸化Auプレート:10mm×10mm)を配置することで測定した。Si量子ドット11層連結構造において、コレクタ電極に+40V印加した場合、Vs>-10Vで電子放出が認められ、|Vs|の増大に伴い電子放出電流は指数関数的に増加する。Vsを一定として、コレクタ電極に負バイアスを印加し、これを変化させて測定した放出電流を微分することで放出電子の運動エネルギー分布を評価した結果、Vs=-12Vでは、電子フラックス密度は運動エネルギー~3eVで最大となることが分かった。同様の測定を13層および15層のドット連結構造において行い、電子フラックス密度が最大となるピーク運動エネルギーと最大電子フラックス密度を試料電圧に対してまとめた結果、いずれの積層数においても試料電圧の増加にともないピーク運動エネルギーは線形、最大電子フラックス密度は指数関数的に増加することを明らかにした。
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