研究課題/領域番号 |
17K18885
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木須 隆暢 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (00221911)
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研究分担者 |
井上 昌睦 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (80346824)
東川 甲平 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (40599651)
鈴木 匠 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (70756238)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 超伝導接続 / 高温超伝導線材 / 磁気顕微鏡 / 局所分布 / 臨界電流 |
研究実績の概要 |
本研究は、高温超伝導線材を用いたコイル巻線に適用可能な、超伝導接続技術の可能性を明らかとし、定常強磁場発生を可能とする高温超伝導マグネットの永久電流運転実現のための基盤技術を確立しようとするものである。パルス通電融着法を適用することで、短時間に局所的な接続形成を可能にすると共に、接続部位の超低抵抗特性を局所的にかつ高精度に計測する手法を確立する。本年度の主な成果は次の通りである。 (1)パルス通電融着による超伝導接続プロセス技術開発:大電流パルスの印加を可能とするバイポーラ電源を導入し、パルス波形、接続圧力を変えた実験によって、電流通電によって局所的な溶融が可能である事確認した。しかしながら、超伝導薄膜線材の超伝導層は非常に薄いことから、溶融時に焼損を招き超伝導層間の融着には至っていない。現在中間層などを介した接続形成についてプロセスの改良を行っている。 (2)超低電界における接続抵抗の評価技術開発:短尺の接続試料を用いて、低電界での接続特性の評価を可能とするため、従来のコイル両端の接続によって閉ループを形成する手法では無く、接続単体で局所的に評価可能な計測手法を提案した。この事によって、接続単体での評価が可能となり、接続特性の評価が格段にスピードアップ出来る。また、線材の磁界下の超低電界領域における特性を明らかとし、実用環境下における超伝導マグネットで永久電流モードを行う場合に実現可能な運転電流を超低電界領域で定量的に評価することに成功した。 (3)さらに、現在実用化されているPbBiハンダ接続を用いた超伝導接続に対し、極低温・磁界下の磁気顕微計測実施し、接続内の局所的な超伝導電流密度Jcの分布や臨界温度Tcの分布が評価可能である事を示し、本評価手法は接続の臨界電流性制限因子解明のための手法として極めて有用であることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パルス通電融着による超伝導接続プロセス技術開発に関して、大電流の印加に伴う非線形発熱によって、酸化物高温超伝導体の局所的な溶融が可能である点は実験によって確認する事が出来た。次の課題は、薄い超伝導層の焼損を招かずに、融着できる条件の最適化が必要である。その為、中間層を介した融着など、いくつかの改良を加えたプロセスについて試験を行っている。 また、接続の超伝導特性の評価に関して、従来のコイルの一部に接続を形成する手法ではなく、接続単体で超低電界特性を評価するための新たな局所的磁気計測法を提案した。この事により、作製条件の異なる接続の特性を短時間で効率的に評価する事が可能となり、条件の最適化が飛躍的に加速すると期待できる。 さらに、接続内の局所的な分布を可視化し電流制限因子解明のための手法として、磁気顕微法を、既に超伝導接続として実用化されているPbBiハンダ接続に適用し、実際に局所分部の評価が可能である事を実証した。本手法を用いて、Bi-2223高温超伝導線材とNbTi線材とのハンダ接続の評価にも適用を始めており、接続性能を制限しているプロセス条件が明らかとなりつつある。同様の手法をパルス通電融着による接続に対しても適用する準備は既に整っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、パルス通電融着による接続プロセス開発と、高度な評価技術開発による電磁気的顕微観察と結晶組織観察とを複合的に実施し、効果的な接続プロセス開発を推進する。具体的には、以下の実施項目を推進する。 (1)パルス通電融着による超伝導接続プロセス技術開発:通電融着条件の解明と最適化。 (2)超低電界における接続抵抗の評価技術開発:線材接続部位に適用可能な実用環境下での超低電界計測手法の確立。 (3)接続部位における局所電流分布の可視化:マグネットの実用環境に近い、温度、磁界条件下における特性可視化の実現。 (4)X線トモグラフィーを用いた接続界面組織の3次元非破壊計測:接続内の局所電流分布と微細組織のその場観察によって、電流制限因子を明らかとし、プロセス条件にフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費に若干の端数が生じたため、残が生じた。次年度の助成金と合わせて実験実施のための物品費として使用する予定である。
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