研究課題/領域番号 |
17K18888
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
三浦 正志 成蹊大学, 理工学部, 教授 (10402520)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 超伝導 / グラフェン / フラーレン / 直流ケーブル / 縦磁界 |
研究実績の概要 |
縦磁界超伝導ケーブルは、外側シールド層から内部導体に電流に平行な磁界(縦磁界)を印加することで従来ケーブルの2倍以上の電流送電が可能である。しかし、縦磁界ではローレンツフォースフリーにもかかわらず、①磁束線歪開放トルクと②熱振動による量子化磁束の運動が臨界電流特性を低下させることが確認されている。予備実験によりBaZrO3酸化物ナノ粒子をY123超伝導線材に導入し、世界最高の縦磁界中電流特性を得ることに成功した。本研究では、縦磁界中臨界電流向上を目的に、これまで報告例のなくかつ磁束サイズと同等の有機物であるフラーレンC60やナノグラフェンをY123酸化物超伝導線材に導入し縦磁界利用大容量直流ケーブルの実現に貢献することを目的とした。H29年度は、フラーレンC60やナノグラフェンをY123酸化物超伝導線材に導入を試み、作製条件が縦磁界特性に及ぼす影響について検討した。また、酸化物ナノ粒子の粒子サイズを制御し、これらが従来の線材の縦磁界特性に対して向上するかも検討し、ケーブル設計に向けた計算も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初のH29年度の実施目標であった(1) フラーレンC60導入Y123酸化物超伝導線材の創製及び縦磁界中特性評価及び(2) ナノグラフェン導入Y123酸化物超伝導線材の創製及び縦磁界中特性評価に関しては、一定の成果が得られた。また、従来のBaZrO3よりBaHfO3にすることでナノ粒子サイズを小さく、高密度に導入可能であることを明らかにし、酸化物ナノ粒子であっても縦磁界特性を十分向上させることが可能であることを明らかにした。また、得られた特性をもとに酸化物ナノ粒子導入Y123酸化物超伝導線材を用いた縦磁界利用Y123超伝導線材ケーブルの設計も行い、従来ケーブルより十分大容量を送電できるケーブルを作製できることが分かった。H29年度に得られた成果を学術論文として発表するため、投稿準備中である。 以上のように本研究の進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度には、(3) フラーレンC60+ナノグラフェン導入Y123酸化物超伝導線材の創製及び縦磁界中特性評価及び(4) 有機異相導入Y123酸化物超伝導線材を用いた縦磁界利用Y123超伝導線材ケーブルの設計を行う。 (3) フラーレンC60+ナノグラフェン導入Y123酸化物超伝導線材の創製及び縦磁界中特性評価:H29年度に得られた成果をもとにフラーレンC60とナノグラフェン添加した溶液を作製し、①Y123層とY123+C60+ナノグラフェン層を交互に積層する、②Y123層/ Y123+ナノグラフェン層/ Y123層/ Y123+ C60層を交互に積層する2種類を作製する。これらの臨界電流特性を評価し、ハイブリットナノ有機異相が縦磁界中臨界電流に及ぼす影響を明らかにする。 (4) 有機異相導入Y123酸化物超伝導線材を用いた縦磁界利用Y123超伝導線材ケーブルの設計:有機異相導入により得られた縦磁界電流特性をもとに各層の合成磁場、磁界と電流のなす角度を計算し、有機異相導入Y123酸化物超伝導線材を用いた縦磁界利用Y123超伝導線材ケーブルの設計を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度に本研究で作製した薄膜の磁場中特性を評価する上で必要な物理特性評価装置のメンテナンスが必要となるため、H29年度の一部の予算をH30年度に使用することとした。
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